グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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(魚釣島/尖閣諸島)がテロに会う(仮)1

 

彼らは不法投棄に慣れている知り合いに、慣れない船を操作してもらって、小さな岩山のある島に流れ着いた。

東シナ海で迷い、現在地がどこなのかサッパリ分からない。

現在のところ捨てそびれている、詳しい中身は、運んでいる当人にも正体不明な、危ない物体と一緒に。ドラム缶が小さな船の奥に20個ほどあった。

「この携帯まだつながってるよ。すごいね。で、リュイちゃん、ここってどこ?」

「俺も分かりません」

須藤は辺境でもつながる携帯を持っていた。

GPSの詳しいシステムは分からないが、リュイたちは、その恩恵を被っているだけの、小市民とでもいえようか。

道に迷っても、自分の現在位置だけは確認できる、素晴らしい現代の技術に感謝しつつ、一抹の不安が首をもたげる。

こんなんで俺たち、足とかつかないかな、広い宇宙から誰か、危険物を海に捨てるところをバッチリ見てるんじゃないのかな。

アメリカのNSAとか、そんなのが。

顔を上げると、知らない人影が近寄ってきた。

リュイたちは携帯をいじっていて、岩陰から3人の人影が出てきたことに、気が付かなかった。

「えーと、こんにちは。君ら、何、してんの」

1人が標準語のアクセントで言った。

敵対的なのか、友好的なのかすら、判定しがたかった。胡散臭い彼らのたたずまいに、ぞんざいな口調。

それは彼らのいい加減さを表しているのか、この状況のいい加減さを表しているのか。

それにリュイは中国人だから彼らの言ってることが分かるが、他の2人は分からない。彼らが困った顔をしてリュイの方を窺っていた。

つまりリュイは会話を主導することを求められているのだが、そんなことを求められてもリュイも困った。

白昼堂々と不法行為をするべく、海上で迷っただけの彼らに、その上、もしかしたら通報するかもしれない不審者が現れて、どうしろというのか。

「すみません、ここどこですか?」って聞くわけにもいかないし。

「で、誰?お前」

返事が無いのでイラついたのか、相手は剣呑になってきた。

汚い格好にタオルやシャベル、まるで土建業者、しかし、毒物を埋め立ててきたばかりとか、もしかして同業者か。

リュイと同行してきた須藤たちが、チラチラと相手をみやっている。

でも、こういうときは、見て見ぬフリが相場じゃないのか。

リュイはこの仕事が長くないので、分からない。

仕事の緊急対応マニュアル、不法投棄の現場で同業者と遭遇したらどうしますか?

などという事前講習も何もなく、ハイ、コレ捨ててきて、どこか当局の見つからないところへ、人には言わないで。言ったらコレよ。

怖そうな業者が、首チョンというジェスチャーをした。

それとも、この辺は、何か資源が出る、とか。

リュイは口の上手い方じゃないし、適当なことを言ってごまかすことにした。

環境アセスメント業者」

「嘘つけ。クリーンな企業さんが、こんな物騒なところに来るかよ」

中国にも、環境とかクリーンとかいうとかいう概念はあるらしい。偏見か。

日本だって水俣病裁判から10年で、立派な省エネ工業国家になったのだから。

自分の出身地にあんまり良いイメージを持たないから、日本に来たんだし。とリュイの脳内は、想い出の回想と目の前の相手への対応で大忙しになった。

俺はあの頃の中国は、勃興してはいたものの、次から次へと溢れてくる人口を吸収するほどの職はなかった。

目の前にいる中国人たちは、俺らと大して違わない年恰好をしていた。

彼らは中国で、俺は日本へ、しかし就けた職はこんなんだ。どっちにしろ。そもそもコレは、職というのか。

「ここは物騒なんですか」

「お前らも俺らと似たようなことやってるんだろ。何だよその長髪。日本の田舎で流行ってるのか」

リュイは床屋に行くのが面倒臭いので、伸びた髪の毛を後ろで縛っていた。

「俺らと似たようなことって何だよ。お前のやってることにもよるな。例えば、孤島に来て行き倒れるとか」

「孤島に来て行き倒れてるのはお前だよ」
「そうかな」

 


環境アセスメント業者は、口から出まかせだけど、そんなにまるっきり嘘ってわけでもない。

リュイは日本の小さな環境技術の企業で働いていたことがある。

有害物質を特殊な土の中に埋めておくと毒性がなくなったりとか、そういうやつ。

そこは他の新興企業に技術をパクられて市場を取られ、倒産して、リュイには労働ビザが下りなくなり、須藤たちと働くことになった。

こうして、今も、何、いってんの、このチンク共?という困惑顔をしている2人の半分ヤクザのような人たちと。


「後ろにいるのは日本人だよ」
「だから何だよ。

不法侵入者をタイーホしに来ましたか?ここは日本の領土ですって?
残念でした。ここは俺らの領土です」

「だったら何でそんな物騒なモノ捨ててるんだよ。自分の土地ならもっと愛着を持てよ」
「捨てたところ見たのかよ」
「見てないよ」

リュイたちが不法投棄の業者だということは、確定したらしい。ってことは、向こうもそうなのか。

これでは、不法行為を相互に自白したようなもんだ、俺たちヤクザものは、国籍を問わず、本当にアホなのかもしれない。と、リュイは反省モードに入ってきた。

「この携帯で今、チクってやろうか。死刑だな」
「お前らだって死刑だろ。中国の法律で裁いてやる。ここは中国領なんだから」

「不法投棄で臭い飯くって人生楽しいか?」
「不法投棄で何年なんですか」

リュイは、どうせ廃棄物を海に捨てるような職業生活を送るなら、中国と日本の、どっちで生きていくのが有利なのか思案していた。

いずれ不法就労で捕まって強制送還されるより良いのではないか。

でもせっかく日本語を覚えたし、まともな企業に就職するチャンスが巡ってこないともいえない。

「お互い通報はやめないか。俺だって携帯くらい持ってるからな」
「それで、どうする」
「殺す」
「なーんちゃって」

「お互い死体が見つかったりすると、痛くもない腹を探られたり、面倒くさいですよ」
「こんなところにまで捜査に来るやつはいないよ」
「政府をナメないほうが良いよ。虎視眈眈と狙ってるよ」
「頭の悪そうな奴が、国旗を立てに来たりして、騒ぐじゃん」

「まるで、お前が頭が悪くないみたいな言いぐさだな」

「そんなに、いつも人にケンカを売ってばかりじゃ、まるで頭が悪い。
俺たちは別に利害が対立しているわけじゃない、むしろお友達じゃないか。なあ。違うのか」

「じゃあ今見たことも忘れるんだな」
「俺たちは、どうせ二度とあわねーよ」

リュイたちは、大した情報交換もしないまま、解散した。

そして他の業者もやってるからという適当な理由で、須藤だちと一緒に、島の脇の海岸に、ドラム缶20個を捨てて、せいせいと島を後にした。

ドラム缶は、3人で持っても重かった。