グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

ミノス・ジェライス5

 

ディスパッチャーというのか。方々に顔の効く便利屋だ。外人から手数料を取って、ブラジルに生息した。

人の領土で何か商売をするには、何かと手続きが面倒臭い。

途上国の役人は、概して怠け者。

空調の効かない生ぬるいスペースで、職員が賄賂を取って寝ていたり。

ブラジルのこの州が、そうかどうかは、分からない。リオデジャネイロ・オリンピックのときに綱紀粛正したかもしれない。

が、エンジニア1たちの、ポルトガル語通訳が役所へ電話をしたとき、片手でエロ本でもめくってるような、間の抜けた対応が帰ってきたのは事実だった。人の話を、聞かない。

「だろ?それがブラ公なのよ」

とりあえず、現地でケツを叩く怖い人がいないと、全然進まないと、コンサルタントは言った。

日本人がノコノコ窓口へ行き、お願いしますと頭を下げて、頼むだけでは、1000年たっても処理してくれない。

「だけどそれだと、外人客がこないだろ。

だから、俺たちディスパッチャーが、役人連中のケツを蹴って、客のリクエストを処理するっていう、寸法だよ」

ディスパッチャーを雇えない人は、ご愁傷様。

というわけで、リオグランデは、コンサルタントを通して、ルシオを雇った。

 

 

 

「犯罪率を下げられるか」

ブラジルの役人は意外と真面目だった。

「多分、楽です。東アジアは、土人から先進国民に早変わりしました。アジア人の私たちには、その手腕があります。ITのネットワークがあれば、もっと早いです」

エンジニア1が、あまりに吹きすぎだと思い、エンジニア2に小声で耳打ちした。

「だけど俺ら、南米のこと何も知らないですよ。

南米とか一括りにしてるけど、どこがどことか、知らないし。

とりあえず、犯罪が常態なんですよね。コミュニィって何?それオイシイの?って感じじゃないですか」

ポルトガル語通訳が何を思ったか、聞こえてきた小声を、そのまま役人へ通訳した。

「コミュニティも何も、かつてアメリカが傀儡政権を作って、それと共産ゲリラがケンカして、荒らしまわったのが南米です。大分、アバウトですが」

ブラジルの役人は、肩を竦めた。

「でも、人種の融和には成功してますよね。誰も人種差別なんかしないし。マトモなコミュニティは存在するでしょう」

「だけど犯罪率が高い」

 

 

 


須藤は旧友たちのススメの通り、某証券会社へ行き、わりとすんなりと採用された。

面接官に、「あなたは、見た目も良いし、頭も悪くないよね」なるストレートな評価を貰い。
それで、英会話学校の、つまらない営業に終止符を打った。

ピーノたるもの英語はできないといけない。という信念の元に、須藤は英語を優先し、専攻の経済は疎かになった。

それが須藤の、学業成績やキャリアがパッとしない理由の1つか。

が、見栄えの良い須藤は、英会話の先生をやるより、街中でナンパした男性をスクールへ釣った方が、コミッションが高かった。

アコギな商売なので、早く辞めたかった。

「私は中途半端だよ。川田みたいに世界を旅する根性もないし、レオみたいなキャリアもない」

須藤は、就職したことを、レオに報告した。ついでに人生の反省を開陳した。

「須藤って何で就活しなかったんだっけ」

「彼氏が稼いでて、結婚して子供欲しいとか言ってたし、インターネッツで経済研究にハマってた。国内の情報をあんまり、信用できなかった」

レオは当時、彼氏に尽くす須道を、ちょっと見ていられなかった。勿体ない素材、と思ったが他人は他人だし。

「彼氏とは喧嘩別れか。勿体ない」

見た目の派手な須藤の態度は大きい。ピーノとイジメられたときは、同じだけの攻撃力で、猿たちを追い払わないと行けなかった。

上流階級の婦人に向く性格かどうかは不明だ。彼氏の意外な男尊女卑傾向にもウンザリだった。だったら、パパの方がまだ良い男だと。しかし、嘆かわしい。

少しくらい顔が良くても、エリートに囲まれれば自虐も出た。

「川田はストリート・スマートで、レオは専門職かよ。世の中、見た目だけで生きていけるほど甘くないし、顔ボーナスは年齢で落ちてく」

「お前は顔だけで生きてるのかよ。須藤は性格悪くないよ。ただ、カモっぽいのは分かるけど」

「ピーノは男に甘いみたい。フィリピン・パブでパパに引っかかった、ママみたい。ママは家族に仕送りしてたから、仕方ないけど」

「須藤の面倒見ただけ、良いパパじゃん。苗字もパパのでしょ。奥さんがいたり、体裁悪くて、捨てる人いるよ。世の中にロクデナシは多い」

「苗字を貸してくれたけど、別居だったよ。それは、仕方無いけど。パパには本当の家族がいたし」

流動性の止まった日本の上流社会に、片親家庭は少ない。でも、自分の脇の甘さや世間知らずを、そのせいにはすまい。

パパは須藤に国籍をくれたし、勉強して自立するチャンスをくれた。

ママみたいに違法のフィリピンバーで働かないといけない境遇ではなく。神に感謝しないといけない。