グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

ミノス・ジェライス9

 


日系ブラジル人っているじゃん。

彼らは、ブラジルと日本で、互いに金を送りあったりするの。日本の銀行はブラジルに無いし、ブラジルの銀行は日本に無い。

だから、送金サービス何かを請け負ってる」

リオグランデが借りたオフィスの、上の階にいた会社の人たちは、意外にも日本人だった。ブラジル人とのハーフもいた。

両社の人たちは、ビルの入り口で遭遇し、「ハポネス?チーノ?」と聞いた。チャンポンの上に、間違っていた。

ここには多くの人種がいるから、初対面の人に、どこの言語で話しかけていいか分からない。

混血してるから、見た目と出身地もあまり一致しない。

通じやすいのは、英語とポルトガル語だが、日本人でポルトガル語の出来る人は少ない。

それでこの同じビルに入っていた日系の二社は、意気投合して情報交換していた。

「送金屋って、簡易の、闇屋みたいなのだと思ってました。今は株式会社化とかしてるんですか。

でもこのオフィス、賃料安いよね。胡散臭いのはお互い様か」

「俺たちは日系ブラジル人の多い地区出身だから、そういうツテです。事情通に頼むと、ブラジルでは大分早い。

俺たちはブラジルの法律とか良く知らないし、胡散臭いとか、胡散臭くないとか、深く考える余地はなかったです。

なるべくヨサゲな奴から情報を集めて、自分でも勉強して、上手そうな話か、詐欺か、勘で見分けるしかない。

ここは、とりあえず掘ったもの勝ちです。

あんまり金持ちだと誘拐されるし、ほどほどが良い。このビルは汚らしいから、逆に安全な気がするよ」

「隙間風が吹いても、寒くないですしね。

俺らは、ルシオってディスパッチャーに聞いただけなんですが、アタリなのかな」

「良い人に当たって良かったですね。ただディスパッチャーは方々へ評判が出回るから、詐欺師じゃ、やれません。真面目に商売をやる気がある限り、そんなに地雷はいないと思います。

ここではどの地位の人に当たるかより、良い人に当たるかのほうが大きいです。地位は、金で売買されることも多い」

 

 


川田とアルベルトは、翌日、某銀行へ辿りついた。

アルベルトは窓口へ行き、戻ってきた。

「日本への送金はやってないよ。そのまま持って帰るか。俺は空港までしか付き合えないし、

飛行機の中にまで入ってくる、しつこい盗賊がいるかどうか、知らないが。

ブラジルから日本へのチケットなんて、盗人ブラ公には、目が飛び出るほど高い。まず入ってこないと思う」

「日本への送金サービスは無いの。例えば、日系ブラジル人と現地の人が取引してるの。

このまま持って帰ったら、たんまり関税とか取られそうな気がするの。

アルベルトに3割取られて、次はどれだけ取られるのか。金が、どんどん減っていくよ」

アルベルトはまた銀行の窓口へ行って、戻ってきた。手元に小さい地図を持っていた。

金は、とりあえず日本に送金してしまわないと危ない。

あの鉱山の盗賊たちが、どこまでついてきているのかも、不明だ。

「送金屋まで3割でいい」
「そのあと、空港までで3割で良いよ。俺はサービスが良い用心棒だから」

 

 

 

リオグランデのIT土方の会議は、南米の役人のノリと、ものすごく違うとは言い難かった。

状況がカオスだから、根本的に適当にならざるを得ない。メクラめっぽうに撃ち、当たればラッキーマンだ。無駄な既得権益のブロックが無くて、やりやすいと言えないこともない。

「地方の役所とはいえ、こんな簡単に話通るの、可笑しいですよ。

南米はアメリカの裏庭です。シリコンバレーの落ち武者とか湧いてるはず」

「話通ってないし。俺たちまだ、彼らから一銭も貰ってないよ。可笑しくない」

「無料のコンサルか。それで企画が通ったと勘違いするマインドは前向きでいい」

「だって、通らなくても給料は出ますよ、例えば商社とか。会社は、市場開拓の努力に投資してるんだし」

リオグランデの成立過程は、いい加減だった。

変な会社作ります。南米に興味ある奴ーとか言って、今の仕事に飽きていた人が手を上げただけ。

社名は、メキシコかアメリカの会社みたいなイメージだし、いろいろ適当だった。

モノづくり立国した日本に、世界的に有名なIT企業はない。日本臭さはひっこめた方が良い。それがこの適当なネーミングの由来だった。

ただ、元々海外で親近感を持ってもらう為に、変な名前にする会社は昔から多い。鳥居の息子ははサントリーになるし、石橋はブリジストンになる。

このリオグランデと親会社は、そういうレガシー企業の、野心を引きついた、正当な日系グローバル企業だ、と言える実績を出せるかどうか。

「アメリカは犯罪率もクソも、他人に講釈垂れる実績が無いからじゃ」

「実績あるよ。グローバルなテロ対策。あの警備利権ゴリオシは世界中でしてましたよ。

地球のまるごとネットワークを手に入れる勢いです」

孫正義がトランプに出してた金は何なの」

「土方みたいのですよ。外人が噛んでも痛くない奴」

「痛い、痛くないのラインでよくモメルじゃないですか。

郵政とか。だけど、郵政が痛いなら、アムウェイだって痛い、とか」

「郵政は普通に痛いと思うけど。資金を握られるし、手紙すり替えたりできる。しないと思うけど。

インターネットのない戦中だったらお終い。開封してスパイ探したり。NSAっぽくなる」

「郵政はまだ買収されてないよ。外人恐怖症じゃん。頭の悪い奴が掛かる病気だよ」

「ああいうのは外資のスケールがデカくて卑怯なのか、日本人の経営が下手なのか、見分けがつかない。

国営だと税金っていう無限の砲弾があるし。でも、そういうのに甘えたら、そこで試合終了だよ」

かつて、大航海プロジェクトという通産省が主導した、壮大な投資があった。グーグルに対抗するという志。

悲しいまでにコケた。

人材の集め方を知らなかったのか、人の使い方を知らなかったのか、研究開発のセンスが無かったのか。

黒歴史なので、今更蒸し返す人は少ない。

概要だけ見ると、良い感じ。このギャップが悲壮感を増す。どう反省していいのか、分からない。

その手の失敗は、1980年代から3回ほどあった。

モノづくりでの成功に胡坐をかいたのか。または、相手が一枚上手。

負け知らずのアメリカのコンクリート・ジャングルで、軍需を巻き込んで人々を煽った、壮大な投資には、歯が立たなかったのか。

日本には、競争に血祭を上げない、羊人材が多い。当局は、慣らしやすい人材しか育成しない。