グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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ミノス・ジェライス11

 


かつて、貧しい南米の日系移民は、遠くの日本の太平洋戦争の戦果をラジオで聞いて、興奮していた。

彼らは貧しくて日本から見放されて体よく追い払われた、棄民だった。だが、貧しい生活の中で、大日本帝国の躍進は、心の支えになった。

もちろんアメリカを敵に回した時は、南米の親米政権から敵視されて辛い思いもした。

日本の大本営は景気がよかったが、ミッドウェー辺りから暗雲が垂れ込めた。

バケの皮が剥がれ始めて、日系コミュティは割れた。

これは負けてる、いや勝ってる、って。

最後は降伏したが、勝ち組は負けを認めず、いつまでも喜んでいた。強迫観念に取りつかれ、負けを認めた人を襲撃したり、荒れた。

「その話の教訓って何ですか」

アルベルトが見つけた送金屋は、古いビルの3階にあった。

最近は大手も軒並みサービスを提供し始めた、この送金屋っていうシステムが、川田には分からない。合法なのか、税金取ってるのか

日本は昔、為替屋が中心になって起こした小規模な銀行も多いと言う。多くが、恐慌で潰れたらしい。

川田の送金額は、零細の仕送りってほどチンケではないし、

カジノでドカ勝ちしてどこかに隠してしまいたいような大金でもなかった。アルベルトに3割取られたし、よけいにチマくなった。

「今の日本、どっちだと思いますか」

「何が」

「勝ってるか負けてるかでいったら。金塊掘りから見て」

「え、送金屋から見たら、どうなんですか」

「どっちでも良いです。客がいれば成り立つし、負けが込んで日本からこっちへ出てくる人が増えれば、勝ちです。

製造業は斜陽だから、日本はこれ以上、ブラジル移民を受け入れないし」

南米って移住先としてメジャーなのか。川田は首をひねった。オーパーツとかいう本、本屋にあったっけ。変人男子や女子連中に流行してるのか。ミノスジェライスに詳しくなって、案内でもするか。

そう、かつての南米移民は、日本の人口が増えすぎて困った、外務省のやった棄民政策だ。

耕作不可能なクソ土地を掴まされて、死んだ人も多いという。

目の前の彼らは、過酷な環境を生き延びた、基本勝ち組の子孫だ。

「私は旅費が上がったりするのは痛いです」

「川田さんは、一週間で金塊とか当てる運があるから、勝ちじゃないですか。イケメン連れてるし」

「彼は、高い金を払って買った用心棒ですよ。あなたに渡したお金の3割は、彼が持っていきました。ボラれてます。全然勝ってないです、負けてます」

「俺に当たった時点で勝ってるよ。用心棒と見せかけた、ただの盗人っていうケースもあるし」

アルベルトは営業スマイルを作った。送金屋が、負けずに大言壮語してきた。

「ウチに来た時点でも勝ってますよ。送金屋を装った盗人ってのも、いないことはないから」

「川チャンは、色々勝ち組だよ」

フーンと川田は呟いたが、本当に彼らは凄腕なのか。

川田は元々バカじゃないし、放浪経験が多いから、人を見る目はヘボくない。

受験勉強なんか、しなくても生きていける世界か。彼らに偏差値のラベルはついてない。

外から運に見えるものの多くが、実力だった。もちろん、完璧に、確率っていうこともあるけど。残酷なまでに。

生れ落ちた瞬間から。カスみたいな生育環境に当たるとか、交通事故に会うとか、宝くじに当たるとか。

だけどここにいる人たちは、過酷な環境を真面目に這い上がった人たちだ。だから人柄も誠実で、ビジネスをやれば成功率は高い。

そういう人たちは川田の心に火をともす。バックパッカーは止められない。

 

 


「正直何ですか。金融は、落ち目ですよね。今が旬っていうか、

日本の富はこれから消えていく一方です。人口減少が駄目とかいう話じゃない。

人がいるだけで儲かるなら、アフリカが一番繁栄して、北欧はスラムだよ」

「体があったら体で払うだけの話ですよ。役所の人たちには、税金っていう無尽蔵の砲弾があるから。

これは安い人件費に胡坐をかかないと成り立たない仕組みをしている産業の企業家も同じです。

だから、人を増やせ、増やせと煩いんです。

ただ、今の官製市場もそうだけど、俺らは、それに乗るしかないから、文句は言えない。

でも彼らの脳内では、人体が1つあったら、そこからどれだけ税金が絞れるか、そういう鬼畜です」

「だから、真面目に稼ごうとしないんですか、彼らは。

これだけ技術と種銭があったら、いろいろできそうなのに。それに事業を国に牛耳られると、私たちの投資のチャンスが減ります。

金がなくなって、体そのものが取引される、途上国のスラムみたいな、嫌な世の中の軍靴の音がします」

「何かつらい経験でもされたんですか」

テーブルの下で、誰かが誰かの足を蹴った音と、痛てえ、という声が聞こえた。蹴られた主が、辺りを睨んだ。蹴ったの誰だよ。

ここは紳士ルールが支配した。

須藤が、コレは合コンでない宣言をして、最初に反応したオッサンが、「株ツライ、受験ツライ」などと決定打を放ったせいだ。

子供を思う親心。瞬間的な金儲けへの欲望を超えた、未来への真摯な不安。

「体で稼ぐ。男性だって、そういう目でみられてますよ。生涯年収いくらとか、失業したら警備員でもやれとか。辛い経験もクソもないです」

須藤は、売春婦とカンチガイされた自分のヤバイ発言を回収しに掛かった。

「俺は能力を評価されること自体は、そんなに辛くないよ。実力が金に換算されただけ。レベル上げできる、学校のテストがつまらなくないのと同じ」

「人が売買されると、立場が弱いでしょう。

体を使うこと自体が悪いとか、低能とか、そういう意味とは違います。ただ意志に反して自分の体を良いようにされ、地位が低いのは、キツイ」

今日の須藤の言うことは、いちいち人の同情を引いた。カモ体質というより、別の何かになっている。変態したのか。

「誰だって、人に自分の体を、良いように使われるのは嫌ですよ。その人が、敏腕のエース・コンバットだったら別ですが。

人のモノ扱い。自分が戦闘機だったとします。それで追撃した敵機の数だけ、車体にマークが入っていって、最後は博物館に収容されたり」

何の話なのか、と多くのメンバーが思った。

エロトークなのか、ただの抽象論なのか、区別がつかない。

レオの名刺には、主任研究員とあるが、何の研究をしているのか。こういうエロトークで重役連中を落とすのが、出世の秘訣なのか。ため息が席中に漏れた。

「今は体を使った方が、儲かるんじゃないですか。体の衰えた老人に比べて、若い人が少ないから。相場はそっちの方が高い。

逆に、情報化社会で小賢しい奴は腐るほどいるし、供給過剰です」

供給過剰か、金融屋の自虐。乾いた笑いがテーブルに満ちた。