グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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ミノス・ジェライス12

 


ここの送金屋連中はスーツではないが、仕事は正確らしい。だから川田は彼らに金を渡した。

日本とブラジルの運営許可書、ビザ、日本のマイナンバーカード。

川田は彼らのマイナンバーを大使館に照会し、そういう日本国籍の人が実在するという返事を得た。

会社のノートパソコンを借りて彼らの個人情報を探し、フェイスブックや会社のホームページを見つけた。

ここまでやって詐欺だったら、逆に不気味だ。コストとリターンを比べたら、詐欺では見合わない。

ボケかけた老人を狙う、俺俺詐欺みたいなボロい商売と違う。

送金屋の彼らは、用が済んだ客がオフィスに長居しても、気にしない性格らしかった。

互いに、上手い話を持っているか、どうか。持ってなくても、追い出すほど立て込んでない。

川田とアルベルトは彼らの好意に、図々しく甘えた。バックパッカーとか用心棒みたいな原始人にとって、このジャングルで頭を使って成功しつつあるビジネスマンは見習うべき人種だ。

知恵を盗んでい置いて、損はない。

「もう何日か側にいて欲しい?川チャンは、俺のことが好きになった」

川田はアルベルトに、契約の延長を申し出た。アルベルトは、日本にはいない人種。川田はもう少し、彼のことが知りたい。

「私はもう金塊は持ってないから、盗賊に狙われるリスクは低い。用心棒代はもっと安くていい。それじゃ駄目か。

でもアルベルトは、あの金山の周辺へ戻って、カモ客を探す方が、儲けが良いかもしれない」

男を金で買う、とネタで言う川田を、ブラ公のセオリーで、からかうアルベルト。考えようによっては、ヒモ。

川田の恋愛感情、彼女はそれに支配されるたびに、心の奥をを分析した。

すると、何か新しいことを知りたいとか、弱気になっているところを保護されたいとか、力が欲しいか、他の動機に行きつく。

海外の男女の愛には、ある程度、リアリティがある。偽善じゃない。リアリズムだ。

だから、日本で愛とか恋とか騒いでいる人たちって何なの、とまでは口にしないけど、

それで川田は、日本にあまり女友達がいない。あのコスっからい元ゼミ生たちを除いて。

それはそれで、リスクの多い旅人に向いた体質だ。脇の甘い女は、金を盗られてレイプされて、裏路地に捨てられてお終い。

人は利己的な生き物だが、憎めない。それは旅をしてみれば身に染みた。

「良いよ。ミノスジェライスの用心棒は、変な客にあたってトラブルになることもあるし、そんなに割は良くないよ。

川チャンみたいな、羊客をボッてるほうが、ラクだし。川チャンは、俺を好いてる。ブラ公は、そういう単純なことで喜ぶんだよ」

「羊客て。それにボッたとか。

有り金の3割っていうのは、相場なの。私は相当ボラれたのか。もう払ったから、バラして良いよ」

川田は、知りたいことがあったら、一応聞いておく姿勢だった。

「相場だよ。命には代えられない。マトモな客は、ああいうとき往生際悪く値切ったりしないよ。

俺ら貧乏人が値切るのは、本当に金が無いからで、

そういう感覚は、人によって違うから、相場なんか存在しないのは事実だけど。

自分の命に1銭の価値もないと思ってる奴もいれば、1000億以上の価値があると思ってる奴もいるし」

私の命の価値って何だろう。バックパッカーの川田は、良くそういう状況に置かれた。この場合は金塊の3割だった。アルベルトは慣れてるんだろう。客の足元を見て、相場を読むのも上手い。

 

 

 


送金屋の一階下。リオグランデのオフィスと彼らのスマホに、役所から、しばらく連絡がなかった。

ブラジルの役所の作法は、サッパリ不明だった。

適当に法螺を吹いて、お祈りを出す体質とか、稟議が通らなかったとか、

お祈りは、今後のご活躍をお祈りしております、の略、遠回しに応募者を追い払う、日本企業の定型句だ。京都のぶぶ漬けみたいな、感じの悪い体質だ。

それか、前に来た連中は、ただのヒラで、この案件自体忘れてしまったとか。元々期待度は薄だ。南米に乗り込んだこと自体、無謀なんだから。

が、ここの時間の流れはスローテンポだ。

執拗にして嫌われても困るし、しばらく待ってみよう。

「何も戦果なしで帰ったらクビになると思う?」

「本社は戦果とか、あるとは思ってないだろ。シリンコンバレーの落ち武者がいる地区だよ」

「本当のエリートは、犯罪とか怖いから、来ないないんじゃないですか。意外と穴場かも」

「欧米人はタッグを組むのが上手いよ。日本の役所みたいマヌケじゃない。やっぱり失業した傭兵当たりと組んできたりして、乗りこんでくるよ」

「傭兵だって犯罪怖いじゃん。こっちの一般人は機関銃とか持ってるよ」

「犯罪が怖い傭兵か?それじゃ傭兵じゃない」

「アメ公はこんなことを考えるよ、きっと。アメリカのエンジニアに、地元の警護つけて、バーターでそっちに、自動車工場作るから、みたいな契約を」

「自動車工場、南米って、そういうイメージないんだけど。だから浜松とか来たり。それにトランプは製造業のアメリカへの回帰を促してるから、微妙だよ」

「ラテンのノリで作られた自動車とか、嫌ですね。ブラジルは大手の航空機製造あるから、技術者は、いるんだろうけど」

暇なエンジニアたちは3階の送金屋のオフィスへ行くことにした。何らかのネタか、ひょんな商売のツテを求めて。