グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド4


皆川村娘っ子フェスティバル、夜の部。それは、俺が足を踏み入れたことを後々まで後悔した場所の最右翼である。

と書けば分かる通り、それは、あんまり良い環境じゃなかった。

イケメンの小酒井さんが、オッサン連中に、酌をついで回り、

座っている少女たちの着物に手を突っ込み、完全にオッサンに同化しているのも、あまり見たくない姿だった。

「向井くんだっけ。向井くんは楽しんでないね。ココの娘たちが、お気に召さないのかな?」

「俺、そういうの苦手なんすよ。俺は気は優しくて力持ちって感じなんですよ」

「お前殺されるぞ」
「そんなことないでしょ」
緊張して軽口が滑ってしまう。

この商談を台無しにしたらクビだろうか、

それで会社をクビになって失業した都市民、つまり俺は、また下放されてしまうのだろうか。

俺は拒否を決め込むことにした、とかいう決意は一切なかったのだが、

かといって、こんな状況に放り込まれても、俺の中のオッサン成分が騒がない、

俺は子供なのだろうか、それとも、自分を売った村の文化が嫌いなのか。

「軟弱な奴はブラックリストに入れるぞ」
何のブラックリストなのか。

取引相手は、商品の品質で選ぶべきじゃないのか。

会社のバンには、サンプルの作物などがいくつか入っている。

ウチは品質には自信があると、小酒井は言っていたではないか。

美味いと言われた割にあまりうまくない気がする郷土料理をつつきながら、だんだん仕事がやめたくなってくる。

何故俺はすぐ仕事がやめたくなるのか。

社会の恥部を見るのも、仕事の一部ではないか。

「勘弁してくださいよー、大臣」

ムカイはどこかの同業者なのか、村の偉い人のか分からない人への対応に困っていた。

「いいじゃん、酒池肉林」

「お前の力で手に入れた女じゃないだろ」

この宴会に交じる他の業者、つまり、都市民のつぶやきが聞こえてきて、少し安心するが、それにしても奴ら馴染みすぎ。

爪の垢を煎じて飲みたい。いや飲みたくない。

このオッサンの示威行為が、俺の爪の垢を煎じて飲めという方向じゃなくてよかったと思うべきか。

「今時そんなこと気にしてるのか?」
「それに誰かのお下がりだ。あのオッサン、手をつけてるにきまってるし」
「貰えるものは、貰っておけという世の中だよ」

俺はせいぜい、美味くない料理をつついたり、酒を啜ったり、手元を忙しくして置いた。

15歳くらいの娘が実を摺り寄せてきて酒を注いでくれるが、気分は高揚するどころか萎える一方だった。

はあー、世の中、一皮むけばこんなもんか。

一皮むけばって何だ。お前は男じゃないのか。

オッサン成分の高い無責任な酔っ払いたちの腕から腕へと渡っていく彼女たちの、困っているけど、でも無表情、この男がよしんば良い人で、どこか今より良いところに連れ去ってくれないか、みたいな虚ろな顔、止めて欲しい。

無力、無責任、そういうものの全てが嫌いだ。

村人だって、秩序に適応する人、どこかへ逃げる人などに分かれる。

ムカイは逃げた人だ。まあ売られただけなんだけど、戻ろうとは思えない。だから、彼らの秩序には適応できない。

適当な娘を連れて、隣に並んでいる個室に移る人なども出始めた。

この場合、先輩たちに習い、彼女たちの1人や2人に手を出しておいて、後からコッソリ謝ればいいのか、

断っておいた方が、のちのちの禍根を残さなくていいのか、

判断がつきかねた。

後からコッソリ謝ろうが何をしようが、彼女はやられ損だ。

でも、俺が彼女を一時的にかばうことによって、俺が彼らの秩序への反逆者として、公衆の面前で見せしめに犯されたらどうするんだ?

酒で悪乗りしている彼らは、そのくらいのことはやりかねない。