グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド5


結局、ムカイは何もしなかった。問題はそれじゃない。

ムカイのところに割り当てられた、2、3人の女の子の胸の谷間にポケットにあった札(その日のバイト料の半分くらい)を突っ込んでみたりしただけだ。

胸の谷間、あんまり無かったけど。

それで、ならパンツの中に入れておけば、などのマヌケなことを言ったような気がする。

それは問題じゃなくて、

そのことが全国的に騒ぎになってしまったのは、

その晩、ムカイたち全員、原因不明の食中毒に苦しめられたからだ。

 

「その作物の会社は、もうやってないの」
「もうやめました。求人誌で見たアルバイトだし。それに潰れたみたいだし」

 

 

 

永山と金村は、当時はヒラの刑事で、インターネットで検索したら、その後、けっこう出世していた。

ムカイは2人の刑事にしつこく絡まれた話をした。

食中毒でムカイは数日間、病院のベットで吐いてばかりいたが、彼らは、

どこから調べてきたのか、ムカイが子供の頃に村から老夫婦へ売られたことを知っていて、あの手のイベントに恨みがあるんじゃないかとか勘ぐられた。


「大丈夫ですか?」

全然大丈夫ですか?なんて思ってない能面顔で、

あからさまに嘘くさいことが相手にバレてしまうなら、

そういう空疎ないたわり言葉はいらないのではないだろうか。

俺はトイレに立ち、吐き気をこらえながらベットへ戻る。

そんなことを言ったら、反社性向あり、とか、何とか、尚更犯人扱いされてしまいそうだし。

ハイハイ君らは、偉いよね。

訓練中に腹を壊しても、中座できなくて脂汗を流したりするのかな。

毒なんかに当たる奴は負けだよね。そう、毒に当たったら負け。

というか、自分の入れた菌に当たって苦しむのは楽しいですか、と言いそうな顔を、永山と金村はしていた。

 


「お母さんはあなたが3才のときに自殺し、お父さんには向井繁治さんという、教育塾を営む方に養子に出されています。」
「僕のこと、何でも知ってますね」
「可笑しいですか。何か困ることでもおありで」
「だって村はあまり記録とか取っていないみたいだったし、そもそも学校で文字とか教えないですから」
「死亡証明書は出すし、戸籍管理はしてますよ」

つまり俺たちは、文盲で役人にすらなれないってことか。俺は目の前のマッチョ2人から目をそらして、窓の白いカーテンを見つめた。

雲の上の神牧が、地を這う家畜たちを管理するって感じ。

美味しいポストに就ける人間は、限られていなければならなかった。

教育を授けずに、能力がない、は都合の良い門前払いの口実だった。

だから目の前の体育会系公務員たちにも、どうしても敵対意識が醸成されてしまい、そして向こうも、そのことを知っている。

そして双方には、つねに険悪な空気が漂ってしまう。

俺の態度は、すぐに伝わる。

「君はもしかして、警察が嫌いなんですか?」

「何の心当たりもないのに、捜査されたり、毒物に当たって腹を下していたり、

子供の頃に親が死んだりっていう過去をネチネチつつかれていると、

あまりご機嫌はよくないものです。他の人は違うんですか」

「ああ、悪いね。僕たちは職業柄、デリカシーってものがないし。君は犯罪者なのに、意外とナイーブなんだね。それが犯行の動機かな?」
「もう犯罪者なんですか」

「君が僕たちに、きちんと答えてくれないと、そういうことになってしまう。

この事件は、各方面がいろいろ煩いんだ。

俺たちは、犯人を早く上げたい」

「各方面って何スカ」

「そこまで言うことは無いだろう。ホラ、お前のせいで、彼が、変なことに興味を持ち始めた」

永山は金村を小突いた。

「お前はそんなことをやっていると、出世しないどころか、クビになるぞ。例えば、

彼が数年後に、坂戸議員を引きずりおろす会、なんてのの会長になっていたりとか。

何しろ彼は、坂戸さんが、女の子のパンツの中に手を突っ込むのを目の前で見ているんだ」


金村の名前は、インターネットにほとんど出てこない。

議員の坂戸は、俺に引きずりおろされる間も無く、消えた。

刑事が諦めて消えると、俺はよく売店で週刊誌を買ってきてベットの上に広げた。

坂戸が悪徳業者(その悪徳業者っていうのが、俺たちの会社らしい。

未成年に接待への同席を強要したのも、全部俺たちの会社ってことになっていた)と痴態を繰り広げたとか、

坂戸がハメられたとか、

その悪徳業者、俺たちの会社は、外資系の子会社で、

売っている遺伝子組み換え作物は一代限りで枯れてしまい、農家を完全に一社の依存、統制下に置く種とか、

何かそういう方向へ転がっていって、それで犯人とかは分からずじまい。

俺の犯人扱いは筋が悪かったのか、その後、2人のマッチョには、ちょくちょく入院先に通ってこられたが、一か月ほどで取りやめになった。