グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド6


「あれで、グリーンライフ社は、儲かったっていう噂じゃん。作物市場はあのあと、大きく変わったし」

「いや、潰れましたよ」

遺伝子組み換え食物は、部分的に許可された。

アメリカで解禁されてしばらく経ったので、安全性が実証され始めていたし、苗は、日本の大学と組んで、アメリカと日本の合弁会社が開発したものだ。

ムカイたちの会社は扱うのが早すぎた。


「あの毒鍋事件、けっこう炎上しましたよね」

「でも、ひどかったですよ。良い暮らしをしている都会の連中が、田舎の貧しい人が、村娘を売るのをどうこういうのは、欺瞞とか。

募金でもしてやれとか、ネットに書いてありましたよ」

「中途半端に金が入るから、増長するんですよ。人を誘拐して農奴にしたり。

オーストラリアやフランスの豊かな農村と、日本のしみったれた農村は、どうしてこんなに違うんですかね」

「田舎の風習に口出しするのは、地方の主権侵害とかいって、反対運動の人が騒いでるじゃん」

「御神体派だろ」


「オタさんはそういうの興味あるんですか」
「うん、ちょっとあるかもしれない。
信者とかアンチとか、そういうわけじゃ全然ないんだけど」

俺は、こんなにペラペラしゃべっていいのだろうか。

ムカイは、目の前の彼が、何か危ない組織の構成員とかである可能性を考えてみた。

俺に人相見の才能はない。オタさんは、本人が自称した通り、丸眼鏡にセーターとパンツ、普通の社会人っぽいオタクの人。

全共闘オタクとか、オウム真理教事件オタクとか、そういうのですか」

「でも向井くん、手記とか書いたら、売れるんじゃないの、この事件、まだ時効になってないし」
「勘弁してくださいよ」

俺たちは手元の鍋をつつく。

ココにまた毒が入っていたら、卒倒するくらい笑うしかない。

 

 

遺伝子組み換え食品は毒です。食べると体内に蓄積して取り返しのつかない悪い変化を及ぼします」

街角でよく配っているビラだった。

黒と赤で書かれたどぎついドクロマークが目を引く。中身は、原発反対だったりすることもある。

彼の言ったご神体カルトは、

農作物の需要と供給を結びつける市場と密接に結び付いた、全国組織だが、

あまり興味を持たれていない、都会人には。

都会人は自分たちの食べているものの流通ルートなどに、さして興味を持たない。

左翼とか、エコなんとかみたいなところは、地味に反対しているけれど、中国に見放された彼らには力がない。

ご神体カルトは、中国共産党公認の、唯一の神道だっていう噂だ。

でも俺は、全貌を把握して、その殲滅を目論もうってほどの興味は持っていない。

あの宴会に同席していた人は、他にもいるし。

だから何で、その、ご神体カルトと癒着している与沢という国会議員が、俺をマークしているのかは、ナゾだ。

 

 

 

アパートは豆電球が付いていた。淡い光を頼りに、家に戻って彼女の布団にもぐりこむと、腰のあたりに眠そうな蹴りを入れられた。

今はあんまりくっついて寝たい気分じゃないらしい。

それに、彼女は寝ているところを邪魔するのも怒った。

俺は彼女の布団で寝るのを諦め、クローゼットからもう1つ布団を出してきて部屋の隅で丸くなった。

同棲している彼女、マスミは、

彼女に言わせれば俺を「飼っている」、

家賃、半分払っているのに。

ここに転がり込んだ頃は、ムカイの方が給料が低かった。