グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド19

 

「彼らを行かせないのは、何でですか」

中島は高待遇で雇われている、精鋭の情報捜査官だ。北朝鮮への攻撃に、彼は興味があった。北朝鮮の原子炉や人民台帳は、どこのシステムを採用しているのか。

北朝鮮への攻撃に使われたコンピューターを調べる為に、サイバー・ノート社に送ったのは、元々警察の人間ですらなかった。

高齢者の詐欺を防ぐなどの名目で人を派遣していた、警察の下請け会社の人たちに過ぎない。いわば、街のパソコンの先生だ。

調べたくないことを、見た目、調べたことにしたいとき、こういう人間を派遣するのが、彼らは最早、慣れ性になっていた。

中島は、一言多いことで知られていた。元来、公務員には向いていなかった。

「ヤボなことを聞くね。僕たちは良い給料を出してる。他へ行きたければ、行ってもいいよ」

「本当ですか」

「字が違うバージョンもあるよ。生きたければ、だ。生きたければ、よけいなことはしゃべらないのがお利口さんだ」

中島は、不正な捜査の数々を目の当たりにしてきた。

国策捜査で犯罪の証拠を捏造して、内部告発からバレてしまったこと。

その内部告発者は、警察に睨まれ、今はどこかで清掃員をして糊口をしのいでいること。

重大な捜査に、政治的圧力でブレーキがかかり、不正を示すデータを、見なかったことにしたこと、など。

中島は、警察で働く中で、虚ろな目、諦めの目などを、いくつも見てきた。

日本は最早、大国に名実ともに首根っこを掴まれ、身動きが取れなかった。

アジアの要人とつるんだ政治家や企業家の汚職は摘発できない。

かといって、あからさまに誰かの犬ですとか、無力ですとはいえない。

無力な自分たちでも治められる、無力な民衆が欲しい。

 

 

 

 

金村は元々、脱北者だった。

彼は日本の警察組織と水があった。

黙って言われる通りにし、口数は少ない。

文句は言わないし、他言もしない。

どうせここは、異国だった。

生れた時からそうだった。

家族すら信頼できず、たった1人きりでも、密告の蔓延る祖国と大して変わらなかった。

彼の妻は、朝鮮総連に紹介された女だった。

彼が村を脱走したのは14歳の時だ。

そこは、工作員を育てる村だった。学校では、朝鮮語と日本語が教えられた。

いつも肥料不足で乾いた大地、耕しただけのものを返さない畑、容赦なくとりたてられる重い税。

14歳の金村は、隣の家のおじさんを密告した。彼は僕らの畑から種を盗んでいます。

そして党に目を掛けられ、湾岸で貿易の仕事を手伝うようになり、脱北への糸口を見つけたのだ。

金村は、一日のほとんどを、警察署内のパソコンの前で過ごしていた。見た目の階級は、ほとんどヒラに等しい。

あとは、コリアン関連の組織への出入りとか。そういうときは、しばらく署内からいなくなる。

 

 

 

中島は警察を出てしばらく歩くと、待ち伏せしていた不審な男に捕まった。

「中島さん、アルバイトしませんか。日当10万を出します」

「あなた、誰ですか」

「つまらないIT企業の社長です。私はあなたに、昔、勉強会か何かでお目に掛かったことがあります」

「ああ、北朝鮮を攻撃したっていう。既にうちが調べに行っているところだよね。勘弁してください。100万貰ってもゴメンです。見ればわかると思いますが、私は警察の人間です」

「あんなヌルイ組織が面白いですか」

「日本に面白い会社なんか、ありますか。面白いだけじゃなくて、家族を養えるくらいに収入が安定していて、あなたたちみたいに、いきなり捕まって堀の向こうにやられないようなエンジニアの職が」

「今度は、農村部のIT復興に携わるつもりです。文盲だった農村部の子供たちに、教育が与えてあげられます」

「よかったですね」

「それは前座で、次は北朝鮮のシステムの復旧に関わります」

「はあ、しかし、どうやって。亡命でもしますか」

「亡命といえば、与沢が、韓国に亡命したのを知っていますか」

「はあ、それが、何か」

「きっと面白いことが起きますよ。北朝鮮のシステムはダウンしているし。

与沢は、日本の警察を混乱させる気だ。

中島さんほどの技術者なら、面白いことになるでしょう」