グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド23

 

与沢は、壇上に上がって何かを話した後、しばらくして、マスミの隣へ戻ってきた。

彼はまた取り留めのない話を始めた。

北朝鮮から移民を入れる?でも、どうして」

「今の農業インフラで、作物の供給は十分だし、むしろ最近は過剰生産気味と伺ったのですが」

「ウチに置いてあった資料を読んだのかな」

マスミは黙った。

ロールスロイスの後部座席に、そういうパンフレットが大量に載っていたからだ。

北朝鮮の移民を入れて、日本から米を輸出して儲け、北朝鮮の飢餓を解消し、朝鮮半島に和平をもたらす」

辺りがざわめき始めた。

韓国の警察が入ってきたのだ。

「この集会は中止してもらいます。責任者は誰ですか」

与沢が手を上げる。警察が2、3、彼らに人近寄ってきた。

遠くの方からヘリの音が近づいてきて、

側の空き地に着陸しようとしていた。

警官が叫んだ。
「何ですか、アレは」
「空軍なんか呼んだか。誰か、聞いてるか」

「知ってますか。ここは翌日、人民解放軍に攻撃されることになったんです。

命が欲しければ逃げたほうが良いです。あなたちには、一応、騒乱罪で、警察署に来てもらいますが」

警官が、与沢に言った。

 

 

 

ヘリから降りたイエレンたちは、与沢たちを連行しようとする、韓国の捜査官たちとぶつかった。

「彼らを離してください。大事な情報を持ってます」

イエレンは、英語で話しかけた。背の高いグラマーな、金髪の女。米軍だろうか。捜査官は一瞬ひるんだが、すぐに威圧的な態度を取り戻した。

どこの馬の骨とも知れない犯罪者と、コミュニケーションを取るのも、彼らの仕事だ。捜査官は、つたない英語で言った。

「ここは韓国だ。俺たちが呼んでない奴は入れない。ゴロツキに用は無い。

何故、私たちが彼らを釈放しないといけない?与沢さんたちは、韓国の治安を騒乱した。見過ごすわけにはいかない」

北朝鮮のハッキングのデータを差し上げます。制圧や取引に役立つかもしれません。それから」

与沢が唖然としてイエレンを見た。

「私たちは、いつでも北朝鮮をハッキングできる。それはみんな分かってるはずだった。
あそこのシステムは脆弱だから。誰がやってもおかしくなかった。

といっても、今回やったのは、私たちではないですけど」

「誰がやったのか、知ってるって顔だな」

「与沢さんたちでしょう」

「俺が?そんなことして何の得になる」

「それは、ハッキングの経路を調べればわかります。

日本の警察は面倒臭いので揉み消すつもりみたいですが。

日本から北朝鮮のシステムを狙っている人が出たというより、

日本はハッキングの経路にされたと被害者の顔をしていた方がラクなはずです」

 

 

「韓国の軍部も、統一派のクーデターを止められないなら、人民解放軍に攻撃されると聞きましたが」

「中国は日本の赤化を目論んでいる」

「ご神体カルトと、赤化がどう違うんですか。現に日本の旧農村は赤化したと言われ続けてきた。

繁栄を続ける都市部の周りを、飢餓地帯が取り巻いていたのが日本だ」

「それでも、日本から朝鮮半島まで、名目上の支配権が欲しい人は多いんだよ」

「例えば誰ですか。あなたとか」

北朝鮮のシステムは、人民の戸籍の管理から、軍事施設、核施設まで幅広いところに使われていた。

当初、中国のITメーカーが請け負ったという話だが、北朝鮮は常時、金がないので旧型のままで使われていた。

これらが全てシステムダンしたとなると、金王族に、まともな支配は確立できない。

北朝鮮へは、本当は韓国の軍や警察が捜査に入りたい。といっても、それは国際社会で決まる。残念ながら、私たちは、単独では朝鮮半島の支配権を持たない」

「でも、持つべきだと思っている」

「そう思っています。ですから、与沢さんでしたか。あなたの言うことは言語同断だ、日韓併合の悪夢の再来だよ」

「私たちは北朝鮮のシステムの復旧に名乗りを上げるつもりです。

ハッキング経路のデータの提供と引き換えにして。ついでに、サイバーノート社も」

社長はイエレンの顔を見た。

国連は意志決定のスピードは極度に遅いし、

決まりきった営業形態があるわけじゃないから、

イエレンは勝手に仕事を作って、上に持ちこんだりしていた。通らないことの方が多い。そして、勇み足だったと、相手に謝って回る。

「俺たちが中国の敷いたシステムをいじるのか?」

「ずいぶん景気の良い話ですね。でしたら、韓国企業にも、話を回しましょうか」

韓国の捜査官は、腕を組んでウロウロし始めた。

彼らは北朝鮮は自分たちの領土だと思っているから、他の勢力に荒らされるのは気にくわない。

「復旧させる技術があるなら、どこでもいいんじゃないですか。それも国際会議とやらで決まると思いますが」

社長は、メンチを切ってみた。俺たち、その国際会議とやらに、決定権ないし。

でもその仕事、ちょっと、やってみたい。見るだけでも。捜査官は、渋い顔で社長とイエレンを見ていた。

「それも韓国の議会にでもかけないと、無理ですよ。

私たちは民主国家だし、そんなことでは、あなたたちを逮捕できないけど。

同胞の土地への領土的野心を口にしたとか、それだけで逮捕するほど、腐ってない。

妄想はその辺にしておきましょう」

咳払いをしたり、足元の土を蹴るような音が響いていた。

決定権の持たない人間たちが権利を主張しあい、ウロウロする姿はマヌケだ。