グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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日本の終わりとハードボイルド・ワンダーランド24

 


「俺は良くわからない。韓国にまで行ったの。何しに」

「与沢に連れてかれたのよ。半島統一イベントってやつよ」

「半島統一イベント」

ムカイは自分の不注意でトラブルに巻き込んでしまい、5日ぶりにあった彼女の手を握ったり抱擁したり、したかったが、他に人がいるので、はばかられた。


彼らは会議室のパイプ椅子に、めいめいに座っていた。床で仮眠を取っているエンジニアもいた。

「あとで健康ランドでも行きませんか。体が汗臭くて気持ちが悪いです」

「2日くらいの徹夜は、よくあるじゃないか」

エンジニアは清潔好きだ。

臭気がこもらないように、窓を全開にしていた。

貧乏くさいこのオフィスにシャワールームはついていないから、彼らは、体を洗いたければ、家に帰るか、近場で銭湯か何かを見つけて、利用しなくてはいけない。

日本人が半島統一のイベントに参加したことで、韓国側から、日本側に厳重抗議があった。

与沢とその取り巻き連中は、日本の警察に連行されていった。マスミやイエレンも、あとで話をに出頭しなければいけない。

日本の警察は、日本経由の北朝鮮へのハッキングについて、ずさんな捜査をしたことが、韓国側にバレた。それで極まりが悪かった。

 

 

 

 

マスミはムカイの手を取って、ムカイの薬指にシンプルな銀の指輪を通した。

「ノリは家庭事情が崩壊してるから、結婚とか憧れてるじゃん」

「そうかもしれないけど。俺は彼女に結婚指輪を買ってもらうほど、貧窮してないよ。

逆プロポーズされてるのかな?ドキドキする。っていうかキョドル」

「それは、亡くなった、おじいちゃんに貰った指輪なの。おばあちゃんのは、私が持ってる。

そんなの、人に上げるのはおかしいんだけど、気持ち悪いなら、返してくれても良いよ。

私は自分で言うのは可笑しいけど、理想的な家庭で育ったの。

ノリは、ただの彼氏だけど、とりあえず上げる。

それは首輪じゃないから、別れたくなったら、返してくれたっていいんだよ。

与沢に捕まった時、もうノリに会えないかもしれないと思ったから」

理想の家庭って何だ。俺の実の両親は、ドナドナの牛みたいに田舎に拘引された気の毒な人々だったけど、養父母の家庭は多分、理想的だったんだろう。

ムカイは10歳からでもあそこで育ったから、文字を覚えて、それなりに稼げるようになった。

そういえば孝子さんが、余ったウージーくれるとかいってたっけかな。あれもらって、猟銃所持許可でも取ろうかな。もう与沢みたいな奴に彼女を誘拐されないように。

毒鍋事件とか、つまらないことで脅されないように。かといって、相手を猟銃で殺すってのは、物騒じゃないか?

ムカイはイエレンの依頼通りに、国連の討論会で証言したが、大した反響はなかった。

途上国によくある、人権侵害。戦争で集団暴行が起きたとか、エスニック・クレンジングとか、そういうのに比べたら霞む。

元々、日本の田舎って何かヤバいらしという噂は、世界で流れていた。

日本の田舎は、226の呪いから戦後の補助金が潤沢な状態から、国庫破たんで突然資金が尽きたし、都心の人々を強制連行したから、混乱がひどかった。

ムカイは証言台へ上がるとき、眼鏡とカツラを被って、毒鍋事件のときみたいに、変質的な政治思想の持ち主にストーカーされないように気を配った。

しかし、皆川村の少女は、一歩上手だった。

ムックの着ぐるみのまま来た。みんなビビっていた。俺が会ったときに着ていた汚れたポケモンの着ぐるみは、あれは農作業用で、ムックは出かけるとき用なんだ。

「ノリの会社、シリコンバレー帰りの人が5人くらい入ったんでしょ。元からいた人は、ヤバイじゃん。あんまり余裕ないよ。だから、結婚して欲しいとか、そういうのじゃない。私も、そんなに給料良くないし」

「俺は営業だから、そんなに関係ないよ。エンジニアの人は給料少し下がったって言ったけど、

地方のIT復旧、入札通ったから、人は減らせない、だから増やしてる」

「技術そのものより、企画っていうか、商品化のプロセスに問題があるんじゃないの?

政府の規制がうるさかったし。日本人は完璧主義だから、テスト商品なんかをあまり許さないし」

「最近はそうでもないじゃん。田舎から出てきた文盲の人なんか、海賊版とか安ければ何でも買うよ。

彼らは文字を知らないから、あまり良いお客さんじゃないけど。

人は文字を覚えないと、変なゲームくらいしかできない」

 

 

「最近、与沢とメッセージ交換してるの、見る?」

フローリングの床の上のクッションに座っていたマスミが、ムカイにスマホを見せた。

「はあ?あいつ、北朝鮮行ったんだろ。お前のジョーク、変だよ」

「今のスマホは、どことでも通じるじゃん」

与沢は韓国で何かの罪で訴えられ(騒乱罪とか、そういうの)、日本の議員資格をはく奪されたが、本当に北朝鮮に行ってしまった。

それでたまに、労働新聞に出ていた。農村のカリスマとか。変な奴。

与沢の載った労働新聞のコピーは、よくインターネットに貼られている

ドサクサで金正恩が暗殺され、次の書記長は温厚な人物という噂だった。金正晴、彼らのネーミングセンスは分からない。

金正恩はマサオンとは呼ばれなかったけど、金正晴はマサハルって呼ばれてる。

しかし、与沢を労働新聞に載せるのは、一体誰にアピールしているのか。

与沢は、韓国では国賊扱いだし、日本では失脚した。

それとも与沢は、本当に北朝鮮に尽くす献身的な労働者なのか。

 

 

 


「金正晴は世界史を教えるようになった。あんまり嘘臭くないやつ」

「こっちにマクドナルドがけっこうできた。牧場とかもある。寒冷地に草を生やす技術とかも導入した。あんたの彼氏が昔やってたみたいな会社が来た」

「ITインフラの敷設で、アメリカ人がその辺をうろついてる。俺はアメリカ人を見るとケンカを売ってしまう。白人コンプレックスってやつか」

マスミは、過去のメールをいくつかムカイに見せた。

「これ絶対嘘でしょ。お前騙されてるよ。新手のチェーンメールとかじゃん」

「でも、そういうの流行ってるっていう噂きかないよ。私のところにしか来ないんだよ」

「新手のストーカーじゃないの?俺は指輪なんか、貰ってていいのかな?

俺がヘタレだから、お前がいつもストーカーされるんじゃないかな?」

「ストーカーにあってたのは、ノリじゃん。与沢は、けっこうしゃべったよ。子供の頃、親父にボコボコにされてたとか。

あいつ結構、しゃべるの好きなんだよ。半島を統一するとか、どうでもいいこと、ずっとしゃべってたよ」

農村の人口は、まともなライフ・ラインやインターネット網が敷かれると、前より復活した。

今思うと、何故あんな政策が敷かれていたかは藪の中だった。そういうのは、北朝鮮とかにも言えることかもしれないけど。

マクドナルドの肉に当たって死ね。白人のエンジニアと討ち死にして死ね」

「そういうイジワルなの送っちゃだめだよ。返事が来なくなっちゃうし」

「返事、来てほしいのかよ」

「勿体ないじゃん。北朝鮮情報だよ。しかも、与沢の」

「週刊誌に売ったりしないの」

「こんなの、信じてもらえると思う?

まあ、信じてもらえるとしても、ノリ以外には見せないけど」