グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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The Apprentice21 3

 

 

イヴァーノは出世したかった。営業の能力は誰にも負けない自信があった。

どんな閉まると痛そうなドアにも足を突っ込めるし、どんな方向へ会話が転がっても、食いつく覚悟があった。

70歳くらいの寡婦に、デートを申し込まれても、大丈夫だった。

「特務」でイスラエルの要人に会ったあとは、その野心に、よけいに火がついた。

新しいジャンルを勉強しよう。

そして転職しよう、どこかへ。

給料が上がらず、永年ヒラで、そのくせすぐ特務に駆り出し、無茶をやらせ、失敗すると灰皿が飛んでこない、会社へ。

しかし。

弱小のクセに行動範囲が広い、誰かが、何かを隠すために作ったかもれ知れない、アプレンティス21。

この辺は、相変わらず「いんたあなしょなる」が熱い。

「紙屑になった国債を、どうやって取り立てるかの会。これすごく、80年代の臭いがしませんか?

当時、南アメリカとかアフリカの国債、デフォルト連続してましたよ。

挙句の果てに、利子が嵩んで、貸した先進国の方が、悪徳サラ金呼ばわりされるから、チャラになってしまいました。

80年代、飛んでしまう国はたくさんあったよ。お金を借りて、返さない」

イヴァーノは営業の要領で、隣の人に図々しく話しかけた。下調べしてきたことを、ひけらかしたりして。

ギリシアショック以降、国債の世界は、誰かが大量に売ったらヤバイゾーンに突入して久しいですよ。

国債はだいたい、相互、持合いの世界で、安定していますが。政治的圧力かけて、売らないようにしてるでしょう。

AがBに100万借りて、BがCに100万借りる。それは、お互い、いつか返す。でもいきなり返せと言われたら、手元にない。

ヤーさんが、家に踏み込んできて、目ぼしい財産をムシっていく。高そうな壺とか、アンティーク家具とか。

娘を、遊郭へ売り飛ばす。息子は、マグロ船へ売る。そして、土地も家も人も消えて、スカンピン」

「スカンピンなら土地なんか、どうかな?と思うんですけど、侵略と見分けがつかなくて難しいですか」

イヴァーノたちの会話を引き継ぎつぐと、隣の隣の男性が、周囲へ問いかけた。イヴァーノ唖然。何だその盗みのテクニック。

いきなり議長の座に就任。それ、俺がやればよかった。何コイツ。

テーブルは、何故か円卓。重役会議みたい。何処から持ってきたの、このテーブル。

普通こういう即席イベントだと、長机を適当に並べるじゃん。

このビルは、大手の証券会社か何かが、夜逃げした後なんだろうか。

椅子にもキャスターがついていた。イヴァーノは、前に転がしたり、後ろに転がしたりして、手柄を取られたウサを晴らした。

待てよ、それ俺のアイデアだから、黙れクソが。

なんて言えない、子供じゃないんだし。うちの会社なんか、パイプ椅子だよ。

「誰か知恵を貸してくださいよ。僕は新しいお金の流れのスキームを考えたい」

隣の男性も、イヴァーノ以上にアグレッシブだった。世の中は広い。コンクリートジャングルには、多くの獣が生息していた。

新しいお金のスキームなんて、いかにもこの手のセミナーに集まる人々の野心を刺激しそうなフレーズだった。

「誰でも土地に住んでいます。土地の上の、マンションや一戸建て住んでいます。

土地は、腹巻撒いたオッサンが札束つっこんでやってるみたいなイメージあるけど、卑近でいて、センシティブですよ。

不動産屋は、地元の人とか、地元の政治ゴロがやっていることが多い。

ヨソモノが、ヨソの土地へ、踏み込んで、土地をあっちへ売ったり、こっちへ売ったりして、差額をポケットに入れるのは、好まれない。

すぐにハゲタカファンドとか、地元メディアに書かれるのがオチだ。

かと思えば、土地があるからケンカするんで、もう全部、国有化する、とか、地域ごと、多くのパタンがあります。

班田収授法とか、昔からあった」

「スカンピンの人たちはお金が欲しいから、その土地をまとめて買い取るんです。僕たちが、札束で顔を叩きます」

「占領と何が違うの。植民地支配ですよ。昔やってて、途中で面倒臭くなったから、撤退したでしょう。

小学生でも知ってるよ。あなたの脳内は、19世紀か?」

「武力は入れてないでしょう。

契約で、土地を買っても、そこへ戦闘機や戦車を持ち込む権利はありません。

銃だって、狩猟などの特殊な目的を持つ、特別な許可が無い人以外は、持ちこんではいけない」

「だけど、誰かが武力で攻めてきたら、応戦しないといけないよ」

「私有地への武力侵攻は、当局の警察が取り締まりますよ」

「土地を外人が買い占めて、良い顔するわけがないだろう、現地の人たちが。警察の人も含めて。だから結局、武力衝突になるだろ」

「その地域の、ほとんどの土地が外人所有っていう場所はあると思うんですよ、ケイマンとか、ハワイとか」

「市民権を持っていたら外人とは言わないよ。お前の言う外人は、純粋な外人なの?それとも、移民ってこと?」

土地を金に換える錬金術

土地転がしで逮捕された大物政治家。

世界的に注目される、不動産で財を成した、例のあの人。

侵略まではいかなくても、土地には魔力があり、過去、人々の流した血と汗がしみ込んでいた。

ビルなどを建てるときに、深くボーリングをすると、人骨が出てくることも稀ではない。

イヴァーノは、自分の仕事が、何だか呪われた職業のような気分になってきた。

会議室をこの流れにした隣の獣は、色々呪われた奴だ。

獣は、さっきは、ネタを盗んでゴメンね、って感じでイヴァーノに名刺交換を要求してきた。