グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

Liam2


「ミュリエルって俺のこと、ストーカーしてたよね。それで、俺が何となく手を出したら、ミュリエルが懐いちゃって、別れられなくなった」
「別れたいなら、別れればいいじゃん」
「何、キレてるの。俺、何か悪い事言った」
「私はヒマじゃないの。そんなヨタ話しか用件がないなら、切るよ」

ミュリエルは、答えを聞かずに通話を切った。

人の声がしたから、隣に友達がいるんだろう。

リアムはただ調子にのりたかったんだろう、多分。

彼の行動は、年々幼くなっている。仕事のストレスがひどいのだろうか。

今の仕事が嫌だとさんざんグチッたが、転職に成功した話はまだ聞かない。

学生の頃はピチピチしていて、女子生徒に人気で、30過ぎるとショボクレたオッサン。

そういう男は世の中にけっこう存在するという。

情報源はケイシー。

平然と人の彼氏と寝たと豪語するだけあって、ケイシーの人付き合いは広い。

彼女のインフォーメーションは、貴重と言えば貴重だ。大晦日にあんたの彼氏と寝たよ、なんて、影でコソコソ浮気されるよりはいい。

ケイシーはリアムのことを相手にしていない、

いや、結構合うのではないか。どっちも、チャラってるし。

 

 

 

「金融の営業をしていました。レジュメにある通りです」
「だけど、途中で辞められてますよね」
「辞めてない人なんか、いないですよ。
2008年が、何の年だったかくらい、ご存じでしょう」
「だけど、リーマンショックがあったって、転職してる人は、してるんですよ。
あなたみたいに、プラプラしてない。
コレ、何ですか?高齢者向けの消火器販売?コレ、いつの時代の詐欺ですか。
今時、こんなのが、あるとは思いませんでした」
「どうして、勝手に詐欺だと決めるんですか」
「消防署の許可を取ってやっていたのですか」
「違いますけど。だいたい、転職してる人はしてるって、どこにしてるんですか」
「そのくらい、ご自分でお調べください。ここは電話番号サービスとか職業斡旋所じゃないですから」

リアムは、面接の機会を作ってもらった、お礼を言って立ち上がり、ドアを開けて外へ出た。

このクソオヤジ、鏡に向かって自分と対面してみろ。

あのツラで、あんなことを言われると不愉快だ。

よっぽど仕事で剛腕なのか、あのオッサンは。

ここまで応募者をコケにするとは。リアムが着てきたのは、結構良いスーツだ。大手金融企業の、新入社員の頃に着ていた。

企業の情報は、いろいろなネットワークで広まる。

同僚の噂だったり、インターネットだったり。

 

 

リーマンショック後の、金融屋の世界はカオスに陥った。

引き際を弁え、大金を手に入れてアーリー・リタイアした人もいれば、

仕事下さい、元リーマン・ブラザーズ証券です、とクビに看板をブル下げて路上で求職活動をしている20代の人もいたし、行方不明者なども出た。

オバマは、よくやった、かどうか知らないが、金融屋に支持され、多くの新しい政策を打ち出した。

金融緩和とか、オバマケアとか、スマートグリットとか、新しい金の流れが発生しそうなものを。

今度のトランプって奴は何なのか。

金融屋のことを考えてくれているのか。
アメリカは、いつも新しい金融革命をおこしてきた。

金融は、世の中の血液だ。

流れなくなれば、アメリカは死ぬ。世界は死ぬ。


リアムはトランプの政策を蠅のクソほども知らないが、

それが、彼がニュースを見ないせいか、大統領が政策を語らないせいかは、知らない。

彼は不動産ビジネスで億万長者になったという。

土地バブルなんて中国とか昔の日本とかがやってた、苔の生えそうな手法で、

先進国にも無いことは無いけど、そんなので経済が持つのか。

土地が上がり続け得る為には、無限に人口が増えないといけないが、

俺たちはこうして、ゴミゴミと寄り集まり、仕事を奪い合っている。

マトモな雇用が無いという労働者たちの文句が、やる気の無かったネタ出馬のトランプを、大統領に押し上げた。

だから、奴はリオグランデでメキを追い払う。

際限無い人口増加は止まる。土地の値上がりは止まる。そうしたら景気政策にはならない。リアムの考えられるのは、ココまで。

そういう際限なく出てくる社会への文句自体に、リアムには確信がない。

例えば、不動産ビジネスから、青カビ臭がするのは、

リアムが学生時代から、金融工学の世界に長くい過ぎたせいか、

トランプたちが、世界の時計を後ろ向きに回しているせいか。