読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

1、このサイトは書き直し中で、文章崩れています

追々直すので少し待ってください。

霞が関のホームレス9


息子は、一か月ぶりに家に戻ってきた渡辺のブリーフケースを勝手に漁った。

「この、セルフ・ブランディングって何なの。

この表紙のオッサンに光が差してる角度、よくあるよ。こういうの、俺の志望校のパンフレットもこうなってる。プリズムになってるやつ」

「さあ、何なんでしょうね。俺みたいな負け犬じゃないことは確かだよ」

「何でしょうねって何だよ。父さんって、澄ましてるけど、実は知らないこと結構あるんだろ」

「脳内では分かってるんだよ。俺はその辺の政治家とか女みたいに、ペラペラしゃべれる体質じゃない」

「俺は女みたいにペラペラしゃべるよ。友達にも言われる」

「そこに載ってる、霞ゲート・ダッシュ村っていうの、父さんの元同僚。右端の人」

「真ん中の奴イケメンじゃね?霞ゲートは、無駄にスペック高いじゃん」

「ソレ、土方特集みたいになってるよ。そんなことは、ないかもしれないけど。

IT企業みたいのもあるけど、それもホワイトカラー土方だし。

まあ、霞ゲート止めていきなり異業種の頭脳労働なんて、難しいけど。専門分野を、勉強しないといけないし」

天下りしないの?」

天下りなんて、市場価値が無い奴がすることだよ。ゴリオシじゃん。だから、相手の会社から、頼まれたときしかしない」

「頼まれるんじゃないの。官庁情報とか、欲しいじゃん。コネとか。頼まれたのかゴリオシしたのかの判定も、分かりにくいし」

「何でお前がそんなこと知ってるの。お前はいつの間にそうなった?

俺があまりにも長く家に帰ってなかったからか?小学生のクセに、何でそんなにオッサン臭いの」

「山田の親も霞ゲートだから、友達と霞ゲート研究会作ったんだよ。

俺たちは元々、塾通いで、そういうのを目指してるんだし。

父さんがクビになってやる気ないとかメール送ってきたから、俺も影響されて、一か月くらい塾サボッってるよ」

 

 

 


「何コレ、めっちゃ期待外れ!

俺はケケが人を殺したとか100人殺したとか書いてくれると思ったのに。取材料払え」

サーノがケケの伝記を出版すると、ミミズののたくったようなメモ書きや、達筆の手紙が、いくつも出版社当てに届いた。

キリがないのでメール・アドレスは公開していない。

分かってるよ。構造改革とか、シカゴ5とか書いてもね、ウケないよね、

でも本人からそういう答えが返ってきたんだから、しょうがないじゃん。

ケケの言った、万物は流転するっていうのは、

お前ら全員、野たれ死ね、来世があるさ、みたいな意味かもしれないけど、そこまで書けないし。

ケケが人を殺したかどうか。

この伝記は、失敗かもしれない。

取材対象にとって、悪いことは書いてないから、この先、取材はラクになると思うんだけど。

ソンヂョンイで豚小屋とか書いた後は、誰も相手にしてくれなくなったし、ケケにもなかなか会えなかった。

サーノは三畳半の汚いアパートで、次の取材対象を誰にしようか、ネットサーフィンに余念がなかった。

いつも見上げると目に入る天井の染みは、縁起が良いといえば縁起が良いし、縁起が悪いと言えば縁起の悪そうな形をしていた。要するに、解釈次第だ。