どうでもいい

言及先、リンク先と私には関係がありません。 結果的に関係が生じても責任を持ちませんが、そこまで影響力がないんで気にしないで下さい。

鼻毛会長4


ショーヤと、タクは、せっせと裏帳簿をつけていた。何の裏帳簿かは知らない。

ただ彼らは、簿記の資格を持っているだけだ。

事務所の汚れた花柄のカーペットの下の隠し金庫から、帳簿を出してきて、終わったらそこへしまう。年季が入ってるな、コレ。

多くの人がこのカーペットを踏んできた、俺たちがここへ来る、ずっと前から。


「もう21世紀だ。未だに朝鮮半島に野心を持ってる人がいるんだよ。

本当なら、F22か何かで突撃して奪い返してこない限り、拉致被害者なんて、帰ってこない」

「日本は周辺国の中で、一番朝鮮半島へ、大金をつぎ込んでいるけど、せいぜいが、5番抵当だよ。

日本は北朝鮮から、何を得ているんだと思う?」

「言うほど、つぎ込んでるか?地上の楽園への、帰国者事業とかか?そういう、バーゲンの上手い連中なんか、持ってくると、色々面倒臭いだろ。

二か国を股に掛けて、壺を売り始めたり。世の中、ロクな人はいないんだよ」

テポドンが100発くらいあって、彼らの景気のいい時は、日本にも飛んでくるよ。俺たちはマゾだな」

裏帳簿をつけ過ぎることの副作用、っていうの。

彼らの妄想を止める人はいないし、周囲は敢えて止めない感じだ。外人を憎んで自分の失政が帳消しになるなら、安かった。

会長の事務所の空気は、死んでいると言えば死んでいたし、生きていると言えば生きていた。例えば、

こう他人の領土の所有権について、アホみたいに一席ぶてる無法地帯は、この辺にしかなかった。

ショーヤとタクは、相手が、こういうことをネタで言っているのか、本気で言っているのか、互いに測り兼ねていた。

エッ、ソレがいいんじゃないか。クソみたいなリアルな話は要らない。人生の意味とか、人生の意味とか。

 

 

「マイクさんは、はパチンコを潰したい。だからお前が、パチンコ店に入って、しばらくチンジャラする」

ハア、マイクさんって誰。

どうせロクでもない話でないことは分かっていた。村井は真顔を作った。

「はい、チンジャラします」

彼らに呼び出されて、ロクでもない話でないことがあったか。

「そのあと、おもむろに立ち上がって、10人くらい殺してくるんだよ。分かったか」

さすがに村井は唖然として、焦点の合わない目の前の男を見た。

ポニーテール、ヤク中っぽいコケた頬、注射針の後のある筋肉質の腕。

村井には、いちいち相手の素状を聞く習慣がなかった。

いつもの依頼は、どこかの事務所を荒らして来いとか、ファイルを盗んで来いとか、ハードルの低いものがほとんどだったのに。

ポニーテールは、重そうなバックを足で蹴り、須藤の方へ押し出した。

「いきなり10人やれっていわれても、困るわな。

もしお前がやらなかったら、その金は、回収に行く。金だけ持って逃げても、無駄だ。

バックの中には金と一緒に発信機が入ってるし。尾行もついてる」

かといって、その金はどうしたらいいのか。

銀行に預けておけば、出所したときにそのまま残っているのか。

10人も殺したら死刑か終身刑だろう。結局、この金には意味がない。

村井は、どうしようもないチンピラヤクザだった。

腰を据えてヤクザの組織を這い上がるほど、ヤクザとは水が合わないし、

ヨゴレ仕事から足を洗って、時給800円みたいなチマい仕事をする気にもなれなかった。