どうでもいい

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鼻毛会長7

広い会議室だ、さぞかし大量の人が来るんだろう、各方面ってのから。

そう、各方面。

島野は手元の書類を丸めたり、折り鶴を折ったりしていた。隣の村沢は、パックマンを作り、島野の方へ向けて、パクパクやってきた。

空疎な会議っての。

「カジノの経営なんて、
そんなに難しくないんじゃないですか。
あの王子製紙の人いたじゃないですか。

マカオかどこかで豪遊して、会社の資金をあらかた使い込んだ人。

あれだけ資金あったら、VIPルームとか入って、客のフリして施設を視察しまくって、全部パクって作れますよ。

勿体ない事をしたよ」

「客として遊んでネタをパクれるくらいなら、世の中苦労しないよ。

英語も投下している時間の割には、世界一下手だっていう噂だし」

「面白くないんですよ。もういいですよ。

日本人は面白くない。俺は自分が面白くない人間だってことは、よく分かってます」

お前が面白くないことと、日本人全員が面白くないことはイクオルではないだろ。

発言者は空調が暑すぎるのか、書類で顔を煽っていた。

全体的に、やる気がないのだ。

島野は自分の提起したテーマが外した、だんだんズレていったので、適当に回収しにかかった。

「でも、その御曹司は、カジノに何億つぎ込んだのかね。

俺は賭け事に使う金なんて、100円でも惜しい。

アイスのガリガリ君で、当たりが出るとか出ないとか、その程度にしか興味が持てない。

宝くじなんて買わない」

そう、ガリガリ君なんか買うのか。貧乏臭いな。今時、珍しい、50円のアイスだっけ。あずきバー、ブラックチョコレート。最近、80円くらいするんでないの。だってデフレは経済によくないからね。だから、お菓子も高くないと。

子供の財布を直撃、ドキューン。

50円のケシゴムが、一年後には100円になる。いやいや、消しゴムはお菓子じゃないだろ。

「宝くじって、それは国に掛け金の5割持ってかれるから、腹立たしいんじゃないですか」

ここには役人のメンバーが多いのに、またヤベー方に話が転がったな、と沢村は思った。ガリガリ君の話でもしてろよ。

そこへ天啓。

「日本の会社がカジノを経営するとかしないってことは、関係ないんじゃないの。オリンピック利権の爺さんじゃないんだし」

垣内ジュニアが、ボソっと言った。垣内隆は、日本カジノ推進連盟会長の子息の1人だった。

そのオリンピックの爺さん連中と、垣内会長は、仲が悪くないという噂だ。周囲は、垣内ジュニアの発言を測りかねた。

「そう、そこなんだな」

追従者が現れた。スライムか、ボストロールか。

口先三寸と、データイジリで生きている彼らにとって、公開討論は楽しいが、非公開の会議も、嫌いではない。

持って生まれた能力を発揮できるのは楽しい。賭博みたいな、他人任せのジェットコースターにハマる人の気持ちなんか、分からない人がほとんどだ。

「施設は洋モノでも、外から客が来て、小銭が落ちれば、自治体は助かるし。

中毒者のケアセンターとかもつくって、二度おいしい、そういうこと」

そうなんすか。

ケアセンターなんか作るんですか、そういう人なのか、この人。

各人が手元の出席者名簿を確認する音がカサカサと響いた。

「日本にはコリアンを叩く人がたくさんいるのに、街頭でとぐろを巻いて、ヘイトスピーチをするだけ。

コリアンが邪魔なら、板にクギ打って、客を奪えばいい」

クギが打ってあるパチンコなんて、今時あるの?そんなの俺ら、見たことないし。いやいやモノの例えだろ。視察くらい、行っとけよ。

「なぜ日本人が、30兆円のパチンコに手を出さないか。あんな品の無い商売に、誰も興味を示さないから」

垣内ジュニアが、父親と仲がいいとか悪いとか言う話は、ほとんど流れてこない。

彼は討論が好きなんだろうと、参加者は思った。ある種の、二世によくあるタイプ、一世がヒヒ爺で、反動でインテリ、みたいな手合い。

ヒヒ爺って、お前ね。

「俺には信じられない、欲しいですね。俺もハイテクパチンコ台とか考えようかな。

理工学部の研究室とかで、作らせようかな。産学共同とか言って」

「パチンコのやり過ぎで死ぬとしても、人は、どこかで死ぬ。永遠に生きられるわけじゃない。

パチンコをやめて真面目に働いていますっていう人を、見たことがあるか」

パックマンをいじりながらしゃべる村沢に、垣内ジュニアが言った。

「あなたの言った通り、カジノと中毒者の治療施設で、二度おいしいわけだし、私は反対しないけど。

カジノを作ろうが作るまいが、ハマる人はハマるし、ハマらない人はハマらない。

ボケ老人が夢を見ている江戸時代だって、鉄火場があって、路上で人が死んだり港湾に人夫の死体が浮いていた。

役人が通りがかりの人間を斬って、お咎めなしだった。

役所が処刑した人の死体を、通りに晒して、庶民がウサを晴らしていた。

ギャンブル中毒者の数なんて、変わらないよ」

そうなんですか、詳しいね。

ソレはだから、垣内パパが、いやいやいや。

垣内ジュニアに、一同の好奇の目線が集まっていた。

ギャンブル中毒者の生態系とか。

垣内パパがどういう利権を張り巡らせているなんて、誰もハッキリしたことは言わない。だから、言わないことは、無い。