どうでもいい

言及先、リンク先と私には関係がありません。 結果的に関係が生じても責任を持ちませんが、そこまで影響力がないんで気にしないで下さい。

鼻毛会長8


村井は憂鬱な気分でボストンバックを引きずって歩いた。

一応、トイレの個室に入って、中身を確認したが、全部、札束だった。見たところは。

この札束が、本物であろうが、偽物であろうが、

村井はパチンコパーラーで10人も人を殺したくなかった。いかな生きている価値のないパチンカスとはいえ。

村井は、生きている価値の無い点について、他人を非難できない。

ときどき立ち止まって辺りを見渡したが、誰がマイクとやらのの尾行か、分からなかった。だから、マイクって誰なんだよ、クソが。

終わった人間同士が、殺しあうっていうのは、悪いアイデアじゃない。

でも、それで一生を刑務所で過ごすのが、面倒臭かった。

だったらパチンコのやり過ぎで死んだ方がマシだ。

 

重いボストンバック、村井はパチンコパーラーに入ったら、誰かに交渉を持ちかけたい、このお金上げるから、仕事、交換しませんか?なんて。何しろ、1億円だっていうんだから。欲しくない客がいるか?だけどパチンコの客は、金が欲しくて来ているのだろうか。

 

香港の金融界では、金融機関や当局の、情報開示や、法律の適用を巡って、

中国本土と、地元の英米系金融機関の暗闘が続いていた。

古くからの香港の市民は、民主主義を守りたいし、自由な企業、金融活動も邪魔されたくない。

香港は、アジア1の金融センターだから、それを安易に中国共産党の私物にするわけにはいかない。

しかし香港は、中国共産党の連中にとっても、大事な客寄せパンダだ。安易に潰すわけにはいかない。

そんな危ない香港とはいえ、日本から拠点を移そうと考える人や企業は増えていた。

村雨の勤め先の証券会社もそのうちの1つだ。

 

資本主義が終われば、俺も終わりだ。

日本の世論は、見たところ、真っ二つに分かれていた。

例えば2タイプの人がいた。

安らぎを求め、宗教へ帰依したがる人種と、スリルを愛し、ゲームにはまりこむ人種。

日本で政治に興味を持つのはこの2タイプが多い。

大分、浮世離れしているよ、と村雨は思った。

遊びも仕事も、適度でいいだろっていう、サイレント・マジョリティーのニーズなんか、知ったこっちゃないって顔。

 

このところ、大枚をスリ、証券会社の営業部員の彼に説教する老人などが増えてきた。

金。金。金。あんたのやってることは汚いよ。

地獄に落ちろ。美しい日本を取り戻せ。

村雨は、彼らの言った通りに、証券の売買を実行しただけだ。

カモったわけじゃない。

で、そいつは、もう客じゃないから、シカトしてドアを閉めてもいいが、立つ鳥跡を濁さず。

気のすむまで愚痴を言わせ、お力になれずに済みませんと、頭を畳みにすりつけて帰ってくる。その客を、顧客ファイルから外す。終わり。


村雨は、Yシャツの下に、十字架のネックレスを下げていた。クリスチャンなんでもない、シャレだった。ハリウッド映画とか、洋楽のPVで見たんだろう。

接客が辛くなったり、勝負が煮詰まってくると、よく十字架を握りしめて、指に痕が付いた。

その小さな金属の感覚が、村雨を胸狂おしい気持ちにさせ、そして、勝負に有利な精神状態へ導いたりっていう。

って、何なんだコレは、アフリカのハンティングか。

村雨は、1人でいるときに、たまに爆笑してしまう、人気のない街角とか、滞在先のビジネス・ホテルとかで。でもコレはそんなに変な兆候じゃない。

この業界にいる人たちは、多かれ少なかれ、変な習慣を持っている。

はずだ。

 

村雨は仕事で得た金融の知識を元に、インサイダー取引でお縄にならない範囲で、プライベートで株を運用して、上手くやっていた。

きっと中世には、こういう達成感がないのだ。

誰かを宗教儀式の生贄にして殺したり、ライオンを狩ったりしない限り。