どうでもいい

言及先、リンク先と私には関係がありません。 結果的に関係が生じても責任を持ちませんが、そこまで影響力がないんで気にしないで下さい。

鼻毛会長12

 

日本カジノ推進連盟の会長室は、えらく広く見えた。

スーツの人間がひしめいていたが、ここに、こんなに人が入れるとは、野島は予測していなかった。

といっても、ほとんど入ったこと、ないんだけど。

用事があれば、行かざるを得ないこともあった。何しろ、会長なのだし。

広くなったのは、邪魔なものをどかしたからだ。元会長への、日参者の付け届けや、土産物の、虎の置物とか、水晶玉とか、中国古来の壺とか。

垣内会長が信心深いという噂が飛べば、似たような貢物が殺到する。

秘書のショーヤにしてみれば、それを飾っておかなければ、どこかへ捨てるか売り払ってしまえば、会長が彼ら支持者をないがしろにしているというメッセージになる。

そしてガラクタがこの部屋を占拠していた、かつて、元会長が生存していた頃は。

ショーヤたちは、裏帳簿の仕事が激減した代わりに、子守りのやり方を覚えなくてはいけなくなった。

会長の孫。

この坊ちゃんは、この部屋に入ったことは無い、その辺の壺とか壊すに決まってるから。

非公式の討論会は、新会長、垣内ジュニアの子供の前で、行う。導入された新ルールだ。

だから事務所のメンバーは、偉い人の子守も覚えなくてはいけなかった。

世の中、パチンコ連盟へ行ってAを吹き、ラズベガスの大御所へいってBを吹き、カジノへ反対する寺へ行ってCを吹き、みたいな人が多過ぎるのかもしれない。

それで利権活動に邁進するのはもういいから、政策論争を真面目にやれって。垣内ジュニアは思ったんだろうか。

と出入りする連中は推測していた。

だけど会長とか面倒臭い肩書はいらないんだよ、ボクチン。

だから俺の息子でいいだろ、だって元会長の孫なんだし。正統性がないことはない。

と、忙しい垣内ジュニアは思ったんだろうと、出入りする連中は推測していた。

「あー」

「日本で生活していく上で、最低限必要な市民の教養っていうのは、どのレベルなんですか。
もし今の日本で、中卒で雇ってもらえない人が多いなら、市民のパスポートとして、機能してないじゃないですか」
「ブーブ」
「それカジノじゃないだろ。カジノ連盟の範囲超えてるんだけど」

「だって、子供がカジノなんか喜ぶか?あれは、人生で負けが込んできた、背中に死神を背負った、物悲しい大人の最後の楽園だろう」

「だったら、安楽死施設と一緒にしたらどうですか」
ホスピスの利用者の全てが、賭博が好きとは限らないでしょう。っていうか、ご家族の方がそんな姿を見たくない」
「でも老人ホームは、ボケ防止にパチンコ台置いてますよ」
「うー」

亡くなった会長の椅子には、垣内ジュニアの孫が座っていた。御年、1歳。

「これ、解決になってないでしょ。
新しいことをしているようでいて、ただの意志放棄っていうか」

「だって故人は、日本経済を破たんさせて厳戒令敷くつもりだったんでしょ。それよりマシじゃないの」

「垣内さん、会長の二の舞になりたくない感じ満々だよね。だからといって、コレはないでしょ」
「俺たちの独裁じゃん」

「元会長って、何で出世したの」