グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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鼻毛会長13

 

日本カジノ推進連盟の会長室は、えらく広く見えた。

スーツの人間がひしめいていたが、ここに、こんなに人が入れるとは、野島は予測していなかった。

といっても、ほとんど入ったこと、ないんだけど。

用事があれば、行かざるを得ないこともあった。何しろ、会長なのだし。

広くなったのは、邪魔なものをどかしたからだ。元会長への、日参者の付け届けや、土産物の、虎の置物とか、水晶玉とか、中国古来の壺とか。

会長が信心深いという噂が飛べば、似たような貢物が殺到する。

秘書のショーヤにしてみれば、それを飾っておかなければ、どこかへ捨てるか売り払ってしまえば、会長が彼らをないがしろにしているというメッセージになる。

そしてガラクタがこの部屋を占拠していた、かつて、元会長が生存していた頃は。

ショーヤたちは、裏帳簿の仕事が激減した代わりに、子守りのやり方を覚えなくてはいけなくなった。

非公式の討論会は、新会長の前で、行う。導入された新ルールだ。

パチンコ連盟へ行ってAを吹き、ラズベガスの大御所へいってBを吹き、カジノへ反対する寺へ行ってCを吹き、みたいな人が多過ぎるのかもしれない。

それで利権活動に邁進するのはもう良いから、政策論争を真面目にやれってこと。

「あー」
「投資効率の良い教育機関を、試しにつくって、上級国民のみなさんが、実際に利用してみると。それでフィードバックを重ねていく」
「そんなの進学校とかがやってるじゃん」
「でもあれは、既存の既得権益層のレールとかに、寄生してるじゃないですか。他の環境では通用しないネタも多い」
「じゃあ高い金を使って、留学するの」
「日本にボーディングスクールを作ろうとかいう人、いたよね」
「ばー」
「テストケースが上級国民だと、頭が良すぎるから、
過剰な教育投資を必要としない、ブルーカラー向けの返せる範囲の奨学金制度を整備するとか」

「日本で生活していく上で、最低限必要な市民の教養っていうのは、どのレベルなんですか。
もし今の日本で、中卒で雇ってもらえない人が多いなら、市民のパスポートとして、機能してないじゃないですか」
「ブーブ」
「それカジノじゃないだろ。カジノ連盟の範囲超えてるんだけど」

「だって、子供がカジノなんか喜ぶか?あれは、人生で負けが込んできた、背中に死神を背負った、物悲しい大人の最後の楽園だろう」

「だったら、安楽死施設と一緒にしたらどうですか」
ホスピスの利用者の全てが、賭博が好きとは限らないでしょう。っていうか、ご家族の方がそんな姿を見たくない」
「でも老人ホームは、ボケ防止にパチンコ台置いてますよ」
「うー」

亡くなった会長の椅子には、垣内ジュニアの孫が座っていた。御年、1歳。

「これ、解決になってないでしょ。
新しいことをしているようでいて、ただの意志放棄っていうか」

「だって故人は、日本経済を破たんさせて厳戒令敷くつもりだったんでしょ。それよりマシじゃないの」

「垣内さん、会長の二の舞になりたくない感じ満々だよね。だからといって、コレはないでしょ」
「俺たちの独裁じゃん」

「元会長って、何で出世したの」

「ヤクザの親分とかじゃないっけ。満州で財を成したとか」

手元に、垣内ジュニアのデータだけはある。しかし、彼がどういう人物で、何をしたいのかは、全くの謎だった。

灘高等学校東京大学医学部卒業。1992年、医師免許を取得した。1997年、司法試験に合格した。1998年に東京大学大学院経済学研究科を、2000年に東京大学大学院医学系研究科をそれぞれ単位取得退学。放射線医学総合研究所ハーバード大学附属マサチューセッツ総合病院を経て、東京大学より医学博士号を取得。

これだけ能力があれば、金には困らないんだろう。ホームレスから始めても、財を成せる。

ただ彼は、カジノ連盟の会長を、やりたくないそうだ。垣内ジュニアは、父親が嫌いだ。元会長が、墓に供えられる花々にこだわったのは、この息子のせいもあるという。

だからといって、垣内ジュニアは、元会長の取り巻き連中の、小童どもの争奪戦にもしたくなかった。という噂だ。

「でもさー」

「垣内ジュニアは、俺たちのことが好きなんだよ。適当にやらせてくれるんだから」