グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

КГБ future1

 

「今日も、ネオナチのイベント、出るのか」
マーキスは、ママから見えないところにナイジェルを引きずって行き、小声で聞いた。

ルシーアに珍しくない、貧しい黒人一家。ナイジェルは昔からデキはいいが、行動が無謀で、いつもママを心配させた。

「帰りに、街で買い物してくるよ。何か欲しいものある?」

マーキスは、ママから渡された買い物のリストをナイジェルに渡した。

マーキスは、ネオナチの跋扈する、この治安の悪い街なんかに、あんまり行きたいとは思わない。兄貴は頭がおかしい。

「大丈夫なのか。あいつらクギバットとか持ってるよ」
「俺は鎌とか持ってけばいい。伯父さんの庭仕事用のがあるだろう」
「良くないよ。本当に乱闘になったらヤベーじゃねえか。
何かあったら、警察はネオナチの味方するに決まってるんだし」

「乱闘にならないくらいの技術は、俺にはあるよ」

ナイジェルは昔から、ケンカは弱くない。

ナイジェルは顔を白塗りにして、黒いフードをかぶっていた。

誰かがまじまじと覗きこまない限り、外からは、スラブ人に見えるだろう、多分。

何を目的にしてネオナチの集会に出ているのか、彼ら自身にも分からなかった。ネオナチの思惑が知りたいのか、スパイがしたいのか。

ただ、中途半端にデキの良いナイジェルは、ここルシーアで行われる黒人差別が納得できない。

ネオナチは理不尽だった。

ネオナチは巷に屯し、あまり働かず、自分たち黒人の働いた上がりで食っている。そして養い手である、彼ら黒人を攻撃した。

もちろん、働かない黒人、悪さを働く黒人はいた。

でもナイジェルは、同じ肌の色をしているからと言って同類扱いされたくない。ネオナチは、無差別に通りがかりの黒人を袋叩きにする。

ここで住みずらいと感じる黒人は、出身地へ帰るという選択肢もあったが、

アフリカはどこも人口過密で、住むところがあるかどうかは、不明だった。

ママも他の人も、ここのボルシチピロシキが好きだし

既に亡くなった祖父たちは、ソマリアの虐殺から逃れてきたような手合いだから、尚更戻っても居場所が見つかる可能性は低い。

ソマリア動乱では、国連が難民救済の客船を出していて、その船はルシーアへ着いた。

ルシーアは当時、まっとうな勤労意欲を持つ人手を欲していた。

それで、彼らは、不法移民ではなかったし、

親戚は遠くの石油の掘削へ出稼ぎに行っていたこともあるし、地元では建設でも何でもやって暮らしてきた。

だから、少しづつ金が貯まって、ここの小奇麗なアパートの一室に一家の住処ができたのだ。

黒人は、ズバ抜けてデキが良ければ、テレビに映っているゴールドとかジュワニみたいになれるが、

中途半端にデキの良い黒人は救われない、とマーキスは思っていた。兄のことは好きだが、彼の奇妙な行動は、迷惑だ。

ゴールドがダンクシュートを決め、ジュワニが貧しい人に手を差し伸べている姿がブラウン管に映る。

黒人居住者の多い地区の、黒人向けの番組で、特にそれは何度もテレビに映った。

 

 

 

 

 

 

ジュワニは、長い手足に整った顔立ちをしていて、おまけに何でもできた。

地元の、慈善事業で有名になった、アフリカ出身者の1人だった。

バスケットボールチームの奨学生だが、学業成績でいっても奨学金が貰えたのは確実だ。

ルシーア人は、あまりチームスポーツを好まないから、黒人の独壇場だった。

それに、国土はいつも雪に覆われているから、原っぱで少年たちが野球をするみたいな原風景がない。

ルシーアのバスケットボールチームのオーナーはもちろん、ルシーア人だ。選手は黒人が多い。

ジュワニは、敬虔なルシーア正教徒で、子供の頃から教会行事に熱心に参加し、地元の教主たちの覚えも目出度かった。

同級生の悪たれ連中に言わせたら、真面目クン。

でも、老主教は、彼のことを回想した。

あの子は昔から、恵まれない境遇にある人たちのことを、思いやることが出来た。

聖歌隊では調子ッパズレだったけどね。彼もそのことを気にしていた。だから、彼のコーラスは口パクなんだ。

ジュワニは、民衆からは、あまりにスキがないので、黒い天使とか、変なあだ名をつけられていた。

ギャングのチームみたいなネーミングだ。

それで、何かを勘違いした、不良少年たちに人気があったが、彼が狙ったことではない。

しかし、そういうもろもろが、良い方向へ作用して、彼のNPOビジネスは拡大した。

貧しい人々を救う、向学心を持たせる、未来への扉を開く、犯罪に走らないように人生に希望を持つ。

不良少年の心をつかむことは、大事だ。