グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

КГБ future7


自宅のアパートへチンピラの襲撃をうけてからしばらく、アネットは自重することにした。

欧州大陸の麻薬の流通ルートや、マフィアと当局のつながりは、棚上げだ。

今日は健全な場所へ来た。

リャザン市長就任記念祝賀会、とっても穏当な取材テーマだ。

アネットは群衆の中に、ジュワニの姿を見つけて声を掛けた。

「この前の、大統領選についてのコメント、記事にできなくてすみません、
どこかのチンピラに原稿を盗まれてしまって」

「チンピラ?丈夫なんですか?」

ジュワニの顔が曇った。

ルシーアは、まだ異民族が自由に暮らせる土地ではないのだ。

ジュワニはなるべくそういうことは考えないようにしてきた。

あんたは綺麗な顔をして、いかにもっていう正しい事しかしない、という批判を受けたこともある。

「最近物騒なんですよ。私も変なことにばかり首を突っ込むから悪いんですけど。ここはアメリカじゃないんだから」

「何かマズイことに首を突っ込んだんですか」

「うーん。例えば、ツアーリがネオナチを放置して、黒人へのヘイトクライムを黙認しているっていう取材とか、してたんです。

道端に彼らがリンチした黒人の死体が転がっている写真を載せたり。

マズイことは、他にもあるから、それが原因かどうかは何ともいえなんですけど」

アネットは悪戯っぽく笑った。

突然、中高年の男の声がした。

「ルシーアは、海外と陸続きで、昔から民族紛争の激しい土地だった。

それをことさらに煽りたてるのは犯罪行為だ。

ツアーリは力を尽くしている。

ジュワニさん。できることを地道に積み上げるあなたが正しいんです」

2人の背後には、リャザン市長が立っていた。

 

 

 

ナイジェルとデュークは、住民から半ば強奪した地図を頼りに、列車を乗り継ぎ、

降車した駅付近でピックアップトラックを捕まえて、山岳地帯へ入った。KGBに追われた、事情を話す。

彼らはトラックから降ろしてもらい、その集落の長老に紹介された。

「私たちは、タタールゲリラって言われてるけど。特に何をするってわけじゃない。

ルシーア当局が何か理不尽なことをしたときに抗議の意味で、警官を攫ったり、町長の銅像を吹っ飛ばしたりするだけだよ」

巷の噂では、タタールは凄惨なゲリラ部隊やマフィアを擁し、悪事を働くと言われてる。

その割に、ここは牧歌的な風景だった。

しかしやはり異世界だ。

ターバンに長い髭、見渡す限りの岩山、自動小銃を持つ歩哨の兵士。

本当にもう帰れないって感じだ。


長老が他の村人に呼ばれて姿を消すと、武装した兵士が集まってきた。

「元ネオナチの黒人、KGBに追われてる、フーン」

ターバンを巻いた兵士が、胡散臭そうにナイジェルたちを、値踏みした。

「でもそんな奴らとかかわって、俺らのメリットは、何なの」

デュークが肩をすくめた。

「無いかな、すみません。

でも、西側のジャーナリスト持ってた資料がある。

何かに、使えるか、使えないかは、分からないけど。

お宅は、メディア戦略とか、得意なんだろ?タタールゲリラっていうのは、世界的に有名って噂だよ」

「何の資料だよ」
「俺は面倒臭いから、読んでない」
ナイジェルが、脇から口を出した。

クレムリンにマフィアが出入りしてるとか、そういう話だよ。

どこの勢力だとか、かしこの勢力だとか。そこにはタタールの噂も当然混じってる。

そういう情報が、西側に流れてる。

それが都合が悪くて、当局がそのジャーナリストを、消そうとしてるんだよ」

 

 

病院から帰宅したゴールドは、術後の全身の痛みに苦しんだ。

医者にもらった鎮痛剤だけでは効かない。

ルシーアの医者は先進国に比べたらヤブだ。

広い室内の空調のスイッチを入れに行くのも面倒くさく、寒さで全身が震えた。

ゴールドは心配そうにベットサイドに座り込むメリッサを押しのけて、ベットから起き上がり、

防寒用のコートをひっつかむと、中心街へ向かった。

中心街のあるクラブの地下には、やっぱりVIPルームがあった。そこでは、あらゆるヤクが手に入るし、当局も関与しない。

ただ、そこの入室許可のルールはアメリカとは違った。

セレブかどうかは無関係だった。入れるのは、白い奴だけ。

ゴールドは顔パスでクラブの入り口を通ると、90年代ふうのレトロなハウスの鳴り響くフロアを通り、バウンサーを押しのけて、奥に通じるドアを開けた。