グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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КГБ future8


「私の息子を探してください。大切な息子なんです。行方不明になっています。見かけた方は、ぜひご連絡下さい」

テレビCMで、マーキスのママが訴えていた。そして、映し出される、ナイジェルの写真。

治安の良くないルシーアで行方不明者は珍しくないから、こんなCMは、素人ではとても出せない。

恐らく兄のナイジェルは、ネオナチの集会なんかに出て、KGBに追われているから、特別にこういうCMが出たのだ。

マーキスは憤慨した。

ママの都合ではなく、KGBの都合で出来たCMだ。

「何でママは、こんなテレビになんか出たんだよ」

「だってあの子が帰ってこないじゃない。誰かに攫われたかも知れないじゃない」

マーキスは腹が立ち、悲しくなった。ママが良い人であることはハッキリしていた。

世界で五本の指に入るくらいの良い人だとマーキスは思っていた。

ただ、ママは考えが無さすぎた。

この地で、考えが無いことと、良い人であることは、しばしば重なっていた。

とくにこういうシビアな状況では。

「全国ニュースでツラを晒すなんてひどいよ。コレで兄貴は、暮らし辛くなる。ママは、俺たちが外で生きていくのがどれだけ大変か分からないんだ」

「それは、あんたたちの理想が高いからよ。

私たちは、所詮、移民よ。元いた人たちから見たら、ヨソモノだわ。ある程度迫害されるのは仕方がない」

「俺も兄貴も、外へ出るたびに、クギバットを持った連中に脅されてる。いつか、殺されるかもしれない。

俺たちはいつも、物影に人がいないのを確認して通りを歩いてるんだよ」

「ママはそういう人に出会ったことは無いの。

街のルシーア人たちも、ものすごく仲良しってわけではないけど、あからさまに冷たい目でみることもないし」

「ネオナチは女は狙わないよ。卑怯者だと思われるし、奴らにも、そのくらいの頭はあるよ。

男同士なら、街角でケンカになった挙句に殺し合いになった、とか警察に言えば、済むからね」

ママは古いソファに座り込み、顔を覆った。

 

 

 


「議員に出馬する?」

「この間、祝賀会で市長に言われたんです。市議になって活動の幅を広げたらどうかと。そうすれば、私の活動はもっと力を持つことができ、多くの貧しい人々を救えると」

ジュワニの告白に、アネットは目を丸くし、そして微笑んだ。

「それは、喜ばしいです。そうなったら、私たちの雑誌も賑やかになりますよ」

「でも、ルシーアで、KGBに過剰な予算が割かれていることとか、人種差別とか、そういうことは無視しなくてはいけない。

そういうことを気にしていたらルシーアの公人は務まらない。

だけど、私が市議になれば、何か立場の弱い黒人たちの力になれるかもしれない。悩んでいます」

「崇高な悩みですね。でも、何故、私に相談を?

私はこの前、市長に大目玉をくらったばかりですよ。あげくにテトリストに狙われているし」

アネットはかつて強盗に入られて治安に不安のあるアパートを引き払い、中心街でにぎわう街の一角にオフィスを移転した。

足りない資金は、西側の某勢力が出してくれた。

アネットの取材活動は、結局、そういうところと手が切れない。

いかなフリージャーナリストとはいえ、マフィアやKGBの闊歩するルシーアに、丸腰で乗り込むのは、自殺行為だ。

そしてジュワニとアネットは御近所同士になり、会う機会が増えていた。

ジュワニは黙り、俯いてから、アネットを見つめた。

「お恥ずかしい話ですが、私は社会の構造的な矛盾を捕えるのが苦手なんです。

困っている人がいたら、ただ黙って手を差し伸べればいい。そういう単純な人間なんです。

そして、それが裏目に出ることがある。

例えば良心的な人々が、かつて、アフリカをずっと援助してきた。そして援助漬けで人々は働かず、ひたすら人口が増えて、戦争が起きた。

史上まれにみるような凄惨な戦争が。

もちろん他国から武器が流入したのは事実ですが、武器があったって戦争にならない国がほとんとです。

私も、アフリカの虐殺の犠牲者です。私の祖父母は戦争難民ですから」

「でも、そういうことは、他の人がやればいいのでは?

心配なら、ブレーンを雇うとか。

あなたにはあなたのやり方があり、それが認められているから、ここまで来たんでしょう」