グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

土建2

 

N元は生気を取り戻していた。

「これから全員で被災地に仕事を探しに行くぞ」
「全員ですか?」
「今、すぐ、人夫を手配できますってなった方が、有利じゃないか」
「そういうのは、色々手続きが必要なんじゃないの」

腫れた頬をさすりながら、N元は記憶に浸った。

先日、N市の飲食店で、2人の地方議員が殴り合いになり、

新聞に小さく出た。N元は、彼らを止めようとして、巻き添えを食った。

2人の地方議員は、コップや皿の飛び散った現場を、N元に任せて逃亡したから、余計に騒ぎになってしまった。しみったれていて、やっていられない。

いずれにしても、国のレベルで公共事業費は大幅にカットされ、殴り合いは全くの無駄になった。

しかし、巻き添えで殴られたN元に、幸運が回ってきた。

「地元の業者なんか、みんな、避難所で毛布にくるまってるよ。

最悪、ボランティアとかでも良いから、地元の人に顔を覚えてもらって、仕事が入るようにするとか」

 

 

MAKIKOは、所有する、T中系列の探偵社を閉じようかと思っていた。

T中社は、対象の男性の年収が、どれだけあるかを調べる為だけに存在する、探偵社だった。

このところ、めっきり客が減り、収益が上がらない状態で、チンタラと事務所を開いていた。

「金、金、金、金。ひどい世の中じゃあ、ありませんか」
「またまた」
冷やかしの客が来ていた。昔の父のお客さんだ。一応お茶とお菓子を出す。

ココで拝金は、言うほど、ヒドイ習慣だとはみなされていなかった。

右肩上がりの時代、

年収は、頑張れば上がる、という神話がN県を支配していて、

それは、まるっきり嘘ってわけでもなかった。

いつだって稼げる人間に、人々はついてきた。

人の為に稼ぐ奴は文句を言われない。

 

 

 


M川たちは、防寒具を揃えた。

ボラれたと思うが、これは熊皮、これでも安い方、嫌ならヨソへ行け、とか言われると、文句が言えなかった。

熊皮かよ。

北方領土に、服屋はそこしかなかった。

団体割引も効かないし、シケていた。北方領土の人は商売の方法を知らない。

「ムネオの店」

T島が振り返って店の看板を読んだ。

ムネオとつけると何かいいことがあるのか、辺りに、この手の名前は多い。

ムネオと仲が良いのかと聞くと、ムネオって誰ですか?と聞かれたりするパタン。

防寒具を着たM川たちは、全員、小学生のランドセルみたいにカラフルになっていた。

「お前はサンタクロースじゃねーか」
「これしか残ってなかった。赤しか、ありません、だって。お前が朝寒くて起きたくないとか言ってたせいで、遅れたんじゃねーか、T島」
「サンタクロースって、テレビで見たことないけどな、俺。こんなの売ってるんだな」

彼らが、変な防寒具で喜んで歩いていると、街角に人影がワラワラしている一画があった。

「すげー熊みたいのいるぜ、熊」
「お前が人のこと熊とかいえる筋合いなのかよ」

大柄なY原よりさらに一回り大きな男たちが、その辺を闊歩していた。闊歩というか、足取りは怪しかった。

遠くからでも、酒臭さが匂ってきそうだった。

「あいつらは、ヤバイ。目を合わすのもヤバイ、やめとけ」
「何で知ってるんだよ」
「飲み屋で奴らに絡んだ奴がいるんだよ」
T島は物知り顔で言った。T島は酒が好き、酒場を見つけると、とりあえず入る。馴染の店でなくても、気にしない。

「それで、そいつは、どうなった?」
「白人たちに、どこかに連れていかれて、そのあとは知らない」
「滑って海に落ちたんじゃないのか」
「雪の中に散らばっていた肉片は、熊が食ったんじゃなくて、そいつらのせいって噂」