どうでもいい

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Chinese Palestine1

 


中国の大都市は、2016年から、スラム・クリアランスと称して、滞在者の仕訳を始めた。

(出身大学/年収/税収)などで分類して、クラスをつけて、基準を満たさない者に出る滞在許可は、限定されていた。アメリカのビザと似ているが、ここまでハッキリ基準を打ち出した都市は初めてだった。

 

大都市から、遠く離れた砂漠の地。

きっと日が上ったり下りたりする時刻も、少し違う。
ザーヒルはそこで、頻繁に銃声と人の叫び声にうなされ、真夜中に目を覚ました。

凍てついた闇、窓からほのかに見える街頭の灯り。

辺りは静まり返っていた。銃声なんて、どこにもしていなかった。

ザーヒルと同じように、長い戦乱の後遺症で、頭のおかしくなった同胞が、奇声を上げながら、夜中の街を走り回っていない限り。

世界でも有数の安全な四角い箱の、小奇麗なスペース。特に彼らのいた環境からすれば、天国と地獄だ。

ここは砂漠の真ん中に出来たゴーストタウンだから、少しくらい人々が騒いでも、辺りの深い闇が、喧噪を吸収した。

ザーヒルは汗で濡れたパジャマを替えて、もう一度ベットへもぐりこむ。

ザーヒルは流民で、あまりモノを持たない主義だが、よく寝汗を書いて飛び起きるから、パジャマはダンボールにたくさん入っていた。

 

 

「イスマエル軍の襲撃だ!」

ゴリアテめ!この聖剣を食らえ」

戦争ゴッコは、子供たちの間で、いつたって人気だ。彼らは戦争を知らない世代。

以前、ママに大目玉をくらったから、ハイファは、オモチャの銃を、遊び場の近くの排水溝に隠していた。

排水溝の蓋は、一見開かないように見えるが、たまに簡単に外れる場所がある。子供はそういうのを、目ざとく見つける。

大目玉を食らうといより、ヒステリーだった。この銃を見て、ママは単純にキレた。

壁に立てかけてあった箒でハイファたちの頭を叩きまくったり、手当たり次第に皿を投げたりした。

ユスラの腕には、飛んできた皿の破片で切った傷跡があった。紛争体験者のPTSDなんだろう。

彼らの消えないトラウマは、オルドスへ移ってから生れた子供たちには分からない。

ママは落ち着きを取り戻すと、泣きながらハイファの傷の手当をして包帯を巻いた。

ごめんなさい、ごめんなさい。あなたが悪いんじゃないの。

ママに昔、何があったのかは、よく分からない。彼女は何も言わないからだ。

2人の模造銃はウイグル人の、怪しい露天商から買ったものだ。

 

この辺には、幽霊ビルってのがあって、まるでドバイに立ってるみたいな、立派なマンション群だった。が、交通の便が悪いので、目当ての住人が集まらずに野放しにされたらしい。

目当ての住人というのは1室を買うのに大枚をはたく富裕層とかで、地元の遊牧民とかではなかった。

 

でもこのゴーストタウンに投資したのは、土地を売った金をそのまま幽霊ビル群につぎ込んだ、地元のウイグル人が中心だった。

が、投資したプロジェクトが儲からないのは、自己責任だ。

それで当局は地元人の不満を鎮める為に、空いたビルへの入居権の抽選を行ったり、草原でテントを張って暮らしていたウイグル人の街への出入りを自由にした。

 

幽霊ビルの所有者にとって、テナントや部屋を空けておくのは、負債だった。

それで中国では、少子高齢化による人手不足の解消などを名目に、幽霊ビルにパレスチナ難民を受け入れを決定した。

多分、そんな簡単なハナシじゃないんだろう。

私たちは、昔からややこしかったんだから。

数年後、14歳になって、北京へ留学しているハイファは思う。

 

元々イスラエルに迫害されていた、パレスチナは周辺のアラブ諸国へ分割されそうになり、滅亡の危機に瀕していた。

パレスチナ人は700万人を超え、イスラエルユダヤ人口を脅かしていた。イスラエルは、過剰なパレスチナ人口の引き取り手を探していた。

中国は、かつての大国のしたことを目ざとく取り入れて、成功率が高そうなら何でも真似た。というような噂だった。

私たちのカルガモのお引越しを、総合してみたら。

 

この手の話に、本当のことなんか出回らないし、本当のことなんて、あるかどうか知らない。引っ越し先のアパートを決めるときとか、そんなに真剣には考えない、なんとなく。条件がよければ。そういうのと同じで。

ソレはちょっと卑近か。ハイファは大学のレポートの調べものに目を戻す。

このアパートの条件は悪くない、家賃は中国政府が全額、出してくれるんだし。