読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

1、このサイトは書き直し中で、文章崩れています

追々直すので少し待ってください。

Chinese Palestine4


捜査官がオルドスに入り、パレスチナ人の長老たちを呼び出した。

「全員のDNA検査をするんですか?」

「そうです。上海のテロリストは負傷したまま現場から逃走しています。ただ、飛び散っている髪の毛や体液から、DNAは検出できます。

それでみなさんのDNAと参照させていただきたいんです。パレスチナ人がまとまって住んでいるのは、ここだけですから」

「あんまりじゃないですか。テロがパレスチナ人の犯行だという、あの悪戯書きは讒言かもしれないでしょう」

「ですが、私たち都市住人は、経歴からDNAデータまで当局に記録を取られています。

こうした辺境の住民は例外なんです

一種の少数民族へのアファーマティブ・アクションです。

やましいところがなければ、DNAを取られたって困ることは無いはずです」

訪れた捜査官たちは、空いたゴーストビルの一角を捜査の拠点にした。

捜査が終わるまで、居座るつもりだ。

北京のテロは世間を騒がせていたから、いいかげんな幕引きはできない。

 

 

 

パレスナ人たちは、オレンジの木が乱立する外苑地帯へ集まっていた。

ゴーストマンションの一室にはこれだけの人数は入りきれないし、街中で変な集会をしていると思われるのも困った。

「これは冤罪で適当な奴を捕まえるフラグだぜ。あの、イスラエルの警察がよくやってたやつだ」

子供たちはキョトンとしていた。パレスチナ人に消えない爪痕を残す、イスラエル当局の迫害の記憶。大人たちの反応はまちまちだ。新し土地に適応し、既に忘れつつある人、いつまでも痛ましい光景が眼前から消えない人。

「当局は、誰をしょっ引いていくか分からない。ハイファみたいな奴を連れていくかもしれない。

学業成績が優秀で、スポーツも得意な、有望株だからってな。

それか、その辺の野良商人が売ってるジャンクを適当に組み合わせて、便利な海賊品を売ってるザービルみたいな奴かもしれない。

彼だってその辺のボンクラと違って才能がある。

そういう奴らは、危険分子だから、当局が飼い慣らして、反抗的な態度を取らないようにしないといけない。

きっと中国の歴史なんかを叩きこまれて、共産党の犬として洗脳されるのさ」

人々はハイファとザーヒルを見た。14歳の少女、ハイファ。38歳の闇屋みたいなオッサン、ザーヒル。

かつてイスラエル当局は、無辜のパレスチナ人を含めて、予防拘禁して刑務所へ放り込んでいた。ザーヒルは、その経験者だという噂だ。

きっと改造銃なんかをチャチャット作っていたんだろう。誰もそんなことは蒸し返さないから、真相は知らないが。

イスラエルパレスチナ人の反撃に頭を悩ませていた。狭い土地にひしめき合う、異民族のいがみ合い。聖地を奪い合う、狂信徒の群れ。

この荒涼としたゴーストタウンに来れば、そういうこととは無縁になると、イスラエル人も、パレスチナ人も、中国人も、皆が思った。

「なあ、くじ引きをして、誰かを生贄にしないか、そいつが当局へ出頭する。

北京をやったテロリストって奴を誑かしたってな。そうすりゃこの事件は収束して、俺たちは元の生活へ戻れる」

「何、言ってるんだ、お前は。何が生贄だ。生贄が欲しいなら、お前が行けばいいじゃないか」

「俺は、有望株を当局に軒並み取られていって、また希望の無い難民の群れに戻るのはゴメンだ。

俺はハイファの将来が楽しみだし、ザーヒルの作る海賊品は生活に欠かせない」

「奴らはDNAが欲しいんだろう。北京でテロやって逃げた奴と一致するDNAだ。だから、生贄なんて出したって無駄だ」

 

 

 

 

 

 

役所の殺風景な壁に「汚職はやめましょう」というデカいポスターが貼ってある。

その前の長机で堂々と、ツェイとリウは札束を広げていた。


「希望者にDNAのデータや、今後ありえる教育投資、都市計画などのデータを売って、金儲けをする?

そんなことをしたら、今の都市行政は崩壊しますよ。

このデータ活用は、ただでさえ人種差別的だとか、海外から文句をつけられているんです」

「そんなの、アメリカも欧州も堂々とやってるじゃないか。

DNAは調べていないかもしれないがタックスヘイブンを作って大企業を集めたり、

優秀な人材に就労ビザを出したり、世界から優秀な留学生を集めてるよ。

欧米の良い大学へ行けば、良い筋の教育が受けられ、良い筋のコネができる、そういうブランドの既得権益を利用するのは卑怯だ」

「DNAとかだって、コッソリやっているかもしれないけど、アメリカの保険会社とかが。

DNAそのものは、税収や労働成果を保証しません。確率論です。

それに、DNAそのものを見なくたって、それに類する情報は入手できます。

グーグルもフェイスブックも、情報丸見えですからね。

Gメールの注意書きには、あなたの個人情報の秘密は保障されませんって堂々と書いてあるし。だから、中国はグーグル使ってませんけど。

そういう感じで、何かやるしても、庶民には分からない方法で、ですよ。きっとね、少なくとも当局が堂々と顔を出してやってるわけじゃない。

そこがウチと違うところです」


「このデータ活用による新しい事業は、リーマンショック以降の経済成長率鈍化への起爆剤です。

せっかっく、中国の大都市圏が、ニューヨークやドバイとの差別化をはかっているところじゃないですか」

リウが突然立ち上がった。部屋中の視線がリウに集まる。

「しかし自分のデータや、国の方針を知りたい人は多い。

分かりませんか。市民のほとんどは、薄氷の上を歩くような人生を送っているんです。

銀のさじをくわえて生まれてきた、あなたには分かりませんか。太子党のあなたには。ツェイさん。

人々は、必死に働いて絞り出した金を、子弟の高等教育に注ぎ込み、それでもまともな職に就く保障はないんです。

ここは真っ暗闇です。少しでも、自分の可能性が生かせる道へ進みたい。身の回りの人々の、生活を楽にしたい。

知りたい人に知りたいことを提供するのは、むしろサービスじゃないのか。

人々が知れば活用できることを、行政が独占して隠している」