どうでもいい

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Chinese Palestine5

 

「何故、ハイファとザーヒルなんですか。

2人とも、忙しいし、テロなんかやるわけがない。

ハイファとザーヒルなんて、一番テロリストから遠い人種です。

結局、中国当局は、パレスチナ人居住区から優秀な人を攫って行きたいんでしょう。

あなたたちが、ウイグル自治区チベットにしたのと同じです」

長老たちが、リウに抗議した。

オルドスのパレスチナ人たちは、当局の言う通りに全員分のDNAを提供し、白と判定されたのに、何故ハイファとザーヒルを奪われないといけないのか。

「攫うとは言っていないでしょう。攫うなら、黙ったまま、とっくに攫ってます。

お2人をしばらく、お借りしたい、と言っているんです。

報酬も出すし、無理にとは言いませんが。

私たちは、あなたたちパレスチナ人に、多くの便宜を図ることが出来ますよ。それに」

リウが言葉を切って、長老の顔から目を離し、幽霊ビル群を見やった。パレスチナ人たちの視線もそちらへ動いた。

「未開はないでしょう。

あなたたちは、長年の迫害が祟って、クレーマー化しているんじゃないですか。

ココはチベットウイグル自治区じゃない。けっこうな最新都市でしょう。

北京や上海に比べたら、大分、ゆるいけど、ゆるいから逆に、中流市民には、過ごしやすいということもできます。

住人の差別もしてません。ウイグル人がいれば、漢人もいるし、パレスチナ人もいる」

何故、財政鷹派路線を取らないココの暮らし向きが悪くないのか、本当のところはよく分かっていない。

欧州やアラブへ続く、シルクロードの沿線にあるから。

ディアスポラグローバル化した多民族が多く、アラブや中央アジア、中国の都心から、交流に来る人がいるから。

住人の平均年齢が低く、人口ボーナスの恩恵を被っているから。

出来たばかりで物珍しいから。

元々能力はあっても貧しい人が多く、向上心に溢れているから。

鉄道や幽霊ビルなどの生活インフラが、低価格で提供されていたから。

最低時給が低く、企業が工場を置くから。

「大切な故郷から、当局に攫われてしまうのは、大変です。心細いです。寂しく思います。

だから、報酬は、交渉次第で、どうですか。ただ、私たちは、何をしに、連れていかれるんですか?」

女子中生のハイファはパレスチナ人だが、彼女の交渉スタイルはイスラエル式だ。

むしろイスラエル人の戦略の忠実なコピー。

彼女だって、幼い頃、イスラエル国民だったのだ。

パレスチナ人の多くは、ほとんど国民扱いされていなかったけれど。

 


コンビニの新規出店にはいいんじゃないか、人口多いし、集積してるから。10店くらい建ててもいいんじゃないか。

オルドスの新入居者のH田が、ゴーストタウンをブラブラしていると、身なりのいい中国人に声を掛けられた。見た目は、漢人って感じ。つまり、あまり日本人と変わらない?エギソチックな感じではなかった。

「この辺で、あたらしいプロジェクトでもあるのですか」

「あんた、この辺の人じゃないね。その発音からすると、日本人かな」

H田が手渡されたリウの名刺には、公官庁の役職がついていた。が、これは以前の名刺だ、とリウは言った。

2人はインターネットカフェに入り、資料を見せ合った。自分のいた会社のホームページや、官庁の公示。

「左遷されてきた?それまだ、何で」

「私は少しでしゃばった。

市民の為に、当局の集めているデータを活用しようと思った。

私は勘違いしてたよ。

当局は市民たちに、自由に泳いでほしくなんかない。

中央は、どれだけ努力しても、泥水を飲むような庶民の生活を、救う気がない。

私は、その矛盾をついて、当局の逆鱗に触れてしまったんです」

目の前のスーツの男性は、反体制派か。それとも、ただの運の悪い人?

人付き合いを誤ると、面倒事に巻き込まれるだろう。

今更、なんだけど。

ココは、どのみち異国だ。

 

「僕はオルドスに、コンビニでも作ろうと思ったんだ。ここはそこそこの人口が揃っている。

僕たちに、DNAがどうとか、フェイスブックでアマゾンで集めている客の嗜好とか、そういうデータは入らないよ。

POSシステムで客の買いそうな品揃えをして、待ってるだけだ。

確かに、このビジネスモデルはキツイ。コンビニの経営はシビアで、自殺者も多い。

仕入れから、各種領収書の払込いまで、あまりにもいろいろなことを引き受けるから、アルバイトも目が回って、人気がないよ。

売っているモノは、決して安くないのに、薄利多売っていう感じが拭えない」

リウはH田に、「あんた、私と組まないか」と言った。