グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

Chinese Palestine9

 

頭の良い人は、みんな都心へ行ってしまうのか。

ユスラは姉のハイファがいなくて寂しい。

ボスを失った諜報員。

勉強を頑張れば、いつか私にもお呼びが掛かるだろうか。

ウイグルの行商人から買った模造銃は、側溝にしまいこまれたまま、忘れられた。

いつか誰かが蓋をあければ、埃をかぶったその模造銃が見つかるかもしれない。

彼らは、同じ土地に生まれ、同じだけの人口を持ちながら、ユダヤ人に完敗して離散したことを、いつまでも忘れない。

故郷から遠く、このオルドスの幽霊ビルへの脱出は、モーゼの導きにも等しい。ユダヤ教徒イスラム教徒は、エジプトでの隷属状態から民を救ったモーゼの奇跡を記述した、旧約聖書を共有する。

オルドスの、ウイグル人パレスチナ人は、どちらもイスラム教徒だが、熱心な信徒ではなかった。

仕事や学業を中断して、一日5回もお祈りしなかった。

ここのモスクは、日本でいう神社程度の存在。集会につかったり、イベント会場に使ったり。

中国の拝金主義のせいかもしれないし、働けば儲かる経済システムのせいかもしれない。

 

 

リウの打ち込んだ楔は深く刺さった。

それともリウは、1人ではなく100人、1000人といるのか。

「未来予測は、危険です。あまり未来が分かり過ぎると、生産性は下がります」

このところの中国共産党内部の会議は常にキナくさかった。

何を提案しても、党の存在意義を揺るがす。

「正確な未来と違うことを想定していた方が、人々は無茶します。

例えば目的地に達する為に、5割の犠牲が必要だとします。

5割の部隊は、死して祖国の礎になります。

そのとき、負ける戦も、勝てると言っておかなければ、彼らは死地に赴かない。

犠牲による祖国の栄光は達成されない」

ずいぶん時代錯誤なトークだった。が、大仰な祖国建国の伝説が嫌いな上級幹部は少ない。

ことに権力志向の爺は、自らの肉体能力の衰えから目をそらす為か、この手の話にのめり込む。

だから党が情報を独占し、世間を鼓舞し、カモる為の、嘘情報を流すんだな。

話がオチるところにオチて、辺りに安堵の空気が漂った。

世界中の下級国民に、殴り殺されそうな内容だ。

 

 

中国大陸は、昔から1つの大国だった。夏という古い王朝があり、商、殷、周というふうに、次々に交代していく。その過程で名君や英雄がでる、みたいな感じ。根っからの大国志向だ。

ハイファは、年上の僚友に訊ねられた。

パレスチナ人には、どんな武勇伝があるんだい」

「あんまり無いよ。旧約聖書には、ユダヤ人の苦難と活躍が書いてある。

それは、アラブ人とか、イタリア人とか、各自が自分たちの民族に引き寄せて読むんだよ。

ダビデやモーゼといった英雄、奇跡を起こしたキリストが、本当にユダヤ人だったかは、分からない。福音書を書いた人がユダヤ人で、捏造したのかもしれない。

本当はパレスチナ人だったかもしれない。パレスチナ人の登場人物もいると思うけど、私は詳しくないの」

ハイファはイスラム教のベースをよく知らない。ムスリムの習うのは、ほとんどがムハンマドの口承したコーラン

旧約聖書を前提にしてるが、それは応用科目って感じではなかったか。

「こういうことを言うのは気が引けるんだけど」

「何」

「それから、僕が言ったってことも人に言わないでくれ」

「だから何なのよ」

ムスリムは、テロリストが多い。クリスチャンやユダヤ人も、かつて戦乱でしばしば、国境線を変更してきただろう。

中国人はそういうことを、あんまり、しないんだよ。

中国の一揆や反逆は、王朝を転覆する為に起こす。

易姓革命といって、皇帝が民を虐げると、天が罰を下して、支配者を入れ替えるっていう仕組み。中国というまとまりと、国境線自体はさほど変わらない」

「正しいか間違っているかはともかく、あなたの言うことは面白いよ。だけど、何が言いたいのか分からない」

「俺はあの、パレスチナ人の痛みを知れ、という落書きについてのニュースが気になるよ」

「バーカ、あれは冤罪よ、低能。以前、中央の役人が、私の故郷に、住人のDNAを取りに来たのよ。結果は、全員シロ。

結局、誰も捕まってないでしょう。

あの落書きは、現場の誰も見てないっていう話よ。誰の讒言かしらないけど、そういう嘘でパレスチナ人を貶めるのは許せない」

ハイファは14歳、まだ幼い。激高すると本音を放言するし、僚友は、このパレスチナの少女が、少し心配になった。