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1、このサイトは書き直し中で、文章崩れています

追々直すので少し待ってください。

不動産屋1

 

不動産市場は右肩下がりだ。それはハッキリしている。

右肩上がりだというレポートには、ここ10年以上、お目にかかったことが無い。

でも会社にそんなことを言っても無駄だ。

市場に可能性が無いなら、なおさら営業の根性で補わなくてはいけない、というわけだ。

ウェスチング・ハウス社の営業は10人いて、その中で俺は7位くらいの成績だった。

1年前は3位くらいで、性格の悪い支店長が、

女房に捨てられてテンションが下がっているんだろう、などとプライバシー侵害を余裕でしてくる。

他人の家庭に口出しするのは無いんじゃないですか、と抗議したら、お前がトップになったら、俺が土下座してやるとか言われた。

オッサンに土下座とかされても嬉しくないし。

電車を降りてからマンションへの帰り道を歩く間、持田の頭にあるのは仕事のことばかりだった。どのみち私生活はそんなに楽しくない。

駅を降りて10分ほど歩くと、妻子が出て行って広々している(別居した分、家代は二倍に)、俺のマンションが見えてきた。

仕事が不動産屋だからといって、良い物件を横流ししてもらえるわけでもないし、この職場を選んで得したことってあんまりなかった。

不動産の営業はフレッシュさとか何とか言って、オッサンって少ないし。

そろそろ上のポジションに上がらないと苦しい。

 

 

 

 

息子の字であて名書きがしてあって、小学校で描いたという絵が同封してあった。

俺に似ず絵は上手い。

俺はいつだって絵なんか上手かったためしはなかった。

自分で絵が描けないから、他人の書いた絵を売る。

しかし、デベロッパーが適当に建てたモノを売るだけの作業は、マイホームの夢を売るとか何とか言われているが、

最近は、耐震基準を満たさないとか、床が斜めとか、クレームが噴出して、俺たちはビクビクしていた。

持田は画用紙に光の当たる角度を変え、ためつすがめつしてみた。

見せる相手がいないのが残念だった。

彼らは、俺にかつて妻子がいたことを、最後まで疑っていた。

甲斐性なさそうとか、こんな仕事の話しかできない男は絶対モテないとか。

でも俺らの親よりはマシだけど、とか。

マシな親とマシじゃない親の境界線が、俺には未だに良くわからない。

離縁されるような奴は、ロクな親父じゃないんだろう。

 

 

 


「持田ちゃーん、最近調子悪いんじゃないのー」

うつむき加減で、遠慮がちに集まる視線。

ミーティングの、今日の標的は俺だ。

営業部長は、ゆっくり近づいてくると、背後で立ち止まり、俺の肩をもんできた。

肩をもむって、今時、漫画か。と俺は思ったが、漫画的な威嚇方法にはそれなりの効果がある。

効果があるから各界で多用されていて、

当然俺の肩はほぐれるどころか凝っていく一方だった。

「パパー、肩揉んであげるねー」

修羅場からの現実逃避で、離婚した男特有のノスタルジアが彼を襲う。

息子から、肩をもんであげる、などと言われたことは無かったんだけど、帰ると既に寝ていたり、

昼間録画してあった、オッサンには既に分からない今時のアニメに夢中だったりして、あまり相手にされていなかった。

そもそも、この業界は、オワコン、とまではいかなくても、右肩下がりなのはハッキリしている。

彼らの頑張りにも限界がある。