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1、このサイトは書き直し中で、文章崩れています

追々直すので少し待ってください。

不動産屋4


親権を妻に取られた息子から、今月は学校が忙しいので、会いにいけません、ごめんなさい。というメールが来た。

俺は彼らに虐待の話をされてから、ますます居候を追い出す機会を逃した。

俺は、日本の警察が、どの程度信頼できるかは知らない。

彼は公的機関に、あまりマトモな配慮をしてもらった記憶がない。

例えば一年前の調停離婚だ。親権は、自動的に、ハイ、母親へ。

むしろ妻の方に不貞行為の気配があったのだが、裁判所に出すほどの証拠にはならなかったし、

そういうことを追求するのは気が滅入るので止めた。

自分がデベロッパーの仕事をしていて、感じる、理不尽な習慣なども、どこかに訴え出て、どうにかなるものとも思えない。

変な会社に就職するやつが悪い。

変な親の元に生まれる子供が悪い。

それが世の中のルールだ。

 

 

「履歴書の書き方とか教えて欲しいんですけど」

男の猿は、猿にしては、まっとうなことを言い出した。
「何で?働くの?」
「住むところ、見つけたいですから」

クソ、家賃が貯まるまで、居つくつもりかよ。

俺はヤマンの書いた履歴書を見て、「良いんでないの」と言った。意外と字が綺麗、俺より綺麗かもしれない。

うーん、正直、履歴書いらないだろう。と言っても一応決まりだし。

彼の履歴は、中卒で終わっていて、ほとんど埋めるところが無かった。

彼のことは、猿の片割れのサエコが、ヤマンと呼ぶので、俺もそのままヤマンと呼んでいた。

履歴書に山田辰夫と書いてある。

山田辰夫だからヤマンだって。家庭崩壊してるドキュンなのに、昔のオッサンみたいな名前。

 

 

 

俺が帰ってきたとき、サエコは起きていた。

ヤマンはアルバイトに出ていた。

サエコさんって、昼間、何やってるの」

「学校行ってます」
「あの、ごめん、学費とか誰が出してるの?一応、両親は頼れる状態なんだ?」

「私は奨学金貰ってる、一応」

サエコはうつむいた。

自分だけ高校へ通って、ヤマンに悪いと思っていた。

成績優秀者には奨学金が出て、サエコに、それを蹴る理由はどこにもなかった。

そういえば俺がスーツをクリーニングに出して、洗い替えをクローゼットから出そうとしたら、

女物の制服が掛かっていたっけ。はあ、なるほど、高校生なんだ。でも、人のクローゼットを、勝手に使うなよ。

 

 

「持田さんって、奥さんと子供、いたんだ」

ヤマンは、ベットの脇に置いてあった写真を、目ざとく見つけた。
「ここにいたかったら、人の私物を漁るなって言っただろ」

「漁ってません。目に入ってきただけです」

「居候に過去をつつかれるのは腹立たしいんだ。裁判官につつかれても不愉快なのに」

裁判官につつかれたんですか、という顔をしているヤマンを無視して、俺は写真を引きだしに放り込んだ。

「彼女とか作らないんすか?」
「俺、金ないし」
「俺よりはあるでしょ」
「それは、学生だからしょうがないじゃん。いくらなんでも、お前と比べられたくない」
「俺は一応、労働者でしょ。もう学校行ってないし、学生じゃないよ。俺とオッサンは同じ労働者だよ」
俺は、まじまじとヤマンを見つめた。
「でも、比べ物にならないけど。オッサンは大卒で、良い企業に行ってるんでしょ。
それで、こんな綺麗なマンションに住んでる」

 

 

 

「不動産売るのって、面白い」

「あんまり」

「オッサンが売ってる一番安い部屋はいくら?」

「500万とか」
「じゃあ、私には、無理だね」

「分からないよ。社会人になったら、そのくらい貯まるかもしれない」

「会社に、女の人はいる?」

「いるよ。でも、怖い女の人ばかりだよ。
営業だったら、お客さんに、断られてもへこまない人。あと、ノルマも鬱陶しいし、怒られても平気な人」

「私は怒られるの慣れてるよ」

「俺はあんまりオススメしないかな。ストレスたまるし。

俺は、正直、楽しくない。あんまり大声では言えないけど」

「転職しないの」

「クビになったら考えるよ」


俺とサエコは、朝の出勤と通学で、途中まで一緒に歩くことになった。

家を出るのが同じ時刻で、駅まで同じルートだと判明したからだ。

その事実が知れると、ヤマンはかなり嫌な顔をして、3日目からは、用もないのに、2人のあとを、ついてきた。

ヤマンは、朝の時間帯は寝ているのだが、わざわざ起きてついてきて、そのあとまた寝ているらしい。

ヤマンはサエコのこと好きなのかな。っていうか、つきあってるのか。

が、俺は自分がプライベートに触れるなと言った手前、自分も他人のプライベートには踏み込まないことにした。

サエコは綺麗な女子高生で、たまに振り返る人がいた。1人で歩いていたときより、振り返えられる回数が多い。