グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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原発難民だよ、全員集合10


どこもかしこも、景気の悪い話ばっかり。

日当10万って何だよ。俺も応募したいわ、そのヤバ目の研究に。

庄田は午後の勤務が一通り終わり、廊下に出て、目をこすった。廊下の窓から、赤い夕日が差し込む。

こすった拍子に、コンタクトが落ちた。

慌てて探そうとすると、清掃員がモップ掃除機を転がして近づいてきた。

「あー、お姉さん、待って、待って。

俺、コンタクト落としちゃった。掃除機、止めて」

庄田の声は、掃除機の轟音にかき消された。

 

 

 

 

「福島から来たの?
よく原発絡みの企業で仕事する気になったね。
俺は原子力の博士号持ってて、そういう仕事してるんだけど」


「たまたま派遣先がここだっただけで、知らなかったです。

綺麗なオフィスですとは書いてあったけど」

「オフィスは綺麗だけど、ピーピーなんだよ」

ミナコが掃除機で轢いてしまったコンタクトを弁償するというと、夕食を奢ってくれればいいよ、と言った。それに、お金あるの?と聞かれると、無いのは事実だ。

庄田さんは、気を使って安そうな店にしてくれた。

タコ八とか書いてある。F島の駅前にもあるやつ。

ミナコたちは宴会席を突っ切って、店の隅の、騒音が余り届かない席に座った。

貧乏な2人連れや、1人飲みの客とかが飲むところ。

 

 

 


原発事故は、タイムマシンで戻ったら、防げるんですか」

「うん、311を教訓にして、事故対応のしっかりした新しい原発とそのメンテナンスを、売りだせるといいんだけど。

人々があまり歓迎してないなら、廃業することになっても仕方がない思う。

仕事がないから、俺の回りでは、行方不明になる人がたくさんいるよ」

「F島もそうですよ。地元の人の、半分くらいは、もういないです」

「昔の研究室の同僚が、音信不通で困ってるんだよ。俺そいつに、100万くらい貸してて」

「つながらないんですか。警察に届けたほうが良くないですか」

「捜索なんか、してくれるのか。100万で?」

「私たちは、一応全員、捜索してもらいましたよ。姿が見えない人とか、いなくなった人。
津波に流されて、出てこなかった人もいるみたいだけど」

正田は目の前の掃除婦のアルバイトの子を見た。彼女は被災して、東京へ出稼ぎにきた。修羅場ってのはいろいろある。

 

 

 


「アラブ人の客?」

突然職場に警察がきて三沢を指名したので、彼女は戸惑った。

よほどのクレーマー客でもない限り、1人1人をいちいち覚えていない。

ここは港町だから外国人は多い。


「監視カメラには、あなたが接客する姿が移っています」

もう1人の捜査員が、後ろから乗り出した。

原子力研究者の牧原さん、あなたと同郷でしょう。その船に拉致されてるんです」

「マジですか。でも、思い出すだけでいいんですか」

「参考までにってことなんだけど。船自体には、アメリカ当局が乗り込むらしいし」

「そういえば放射能出てそうな感じっていうか。

私が放射能出てそうっていうのも可笑しいんですけど。怖かったですよ」

三沢は適当なことを言った。

 

 

 


三沢が仕事を終えて帰ろうとすると、スーパーのそばの港の近くに、警察がたくさん来ていた。その周辺に、人だかりがしていた。

三沢は、全く、モブって本当にウザイは。と思いながら、人ごみを書き分けて前に進んだ。

「マッキー!マッキー!」

捜査官の一群から抜けた牧原が、こっちへ向かってきた。警察官が後ろにいた。

「何、やってんの。海賊に捕まったの?」

「そうだよ。日給10万とかいうアホな求人に騙されたんだよ」