グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

人に見られたくない話はninjaid2000@gmail.com

拉致被害者を奪還せよ3


稲田防衛大臣は、イケメン耐性が強ぎた。

もうイケメン見過ぎだった。自衛隊防衛大学で、正装した兵の前に出るし、胡散臭い業者や胡散臭くない業者が、毎日のように突撃してくる。だいたいやっぱり、イケメンだ。

「私はこう見えるけど、美青年とか興味ないんですよ」

イナッチは、挨拶代りに武器屋の営業社員に、そう言っておくのが日課だった。

鬱陶しいとまでは言わないが、意味の無い行為だった。

どいつもこいつも、あの手この手だ。コレが前任の岩、つまり石破だったらラクだろう、底に札束入りの土産饅頭の1つを貰うだけで済むんだから。

何なら靴をお舐めしましょう、ロシアパブの女性でも紹介しましょうか、とまでは行かないだろう。彼はいかにも、ハニー・トラップが効かなそうな岩顔をしてるから。

それは四菱の営業にとっても同じで、この任務は、上から降ってきた、意味のないノルマだったから、どうでも良いことを考えて暇をつぶしていた。

イナッチのその眼鏡、何なの、乱視用か。外してみたい。ノリで壁ドンして外そうか。

彼女はとても、50代には見えない。

その眼鏡は、もしかして、ブサイクがイケメンに、イケメンがブサイクに見えるレンズが入っているんじゃないのか。

イナッチは、オッサンの座敷童、ではなく、座敷で三つ指ついて、政界でのし上がったという噂だった。もちろん、日米共作の変なカルトのバックアップはあったかもしれない。

その胃の痛くなりそうな作業は、そういう倒錯した眼鏡があったら出世はラクに違いない。四菱グループでも開発しようか、そういうの。働く女性にバカ売れだ。

「オッサン転がしが趣味だからですか。それは俺にも散々経験があって、何か涙が。いや、そうじゃなくて」

「四菱1さんは、誰を転がしたんですか」

四菱1は自分のトラウマに触れたくなかったし、ソレも一種の企業機密には違いないから、話を逸らした。

「ベーアさんを転がすのって簡単なんですか」

ベーアを転がすか。ベーア首相は、転がすとか転がさないとかいうタイプではないが、自分に逆らう人が苦手なのは、その辺の政界男子だった。

「森や内田みたいな狸爺よりは不愉快じゃないです。まず対面で、汚いことはしてこないから」

目の前で狸爺を呼び捨てにするくらいには、俺は信頼されている。四菱は心の中でガッツポーズを取った。

「逆に難しい人っていうのは誰なんですか。共産党とかですか」

共産党は政権取ったことが無いし、軍備に決定権がないから接触無いでしょう」

 


北村たちに、家族の生存情報をもたらしたのは、政治家だ。

家族を失った北村たちは、だいたい茫然として、そのぬち、むしろ忘れかけていた。

家族が失踪すること自体は、どんな社会だって珍しくない。

捜索願を出し、戻ってこないこともあり、日々の雑事の中に紛れていく。

例えば死者、ほとんどの死者はそういう感じだ。

だけど墓場から蘇らせたのが、彼らの知らせだ。

家族の生存の知らせより、家に押しかけてくる有名無形の方が彼らを悩ませた。

「姉が生きているのは、どのくらいの確率なんですか」

北村は、たまに意地悪くらいはいいたくなった。ソイツは人の家に上がり込み、平気で誰かの持ってきた札饅頭を食べていた。

「50%くらいじゃないですか」

「正直な人ですね」

北村は彼の名刺に×を付けなかった。変な奴の名刺だって一応は取っておく、偽名の可能性だって高いんだけど。

 

 


「出来ることは全ていたします。力を尽くします」

出来ることって何だよ。

部屋は静まり返っていた。

何を言っても一触即発の気がした。北朝鮮を爆撃でもするのか。

これまで、北朝鮮に拉致されて、返ってきた人はわずかながらいないことは無かった。

そういうことがあると、担当した政治家が盛大に出世した。

この力関係を、家族会だって知っていた。

妹が生きているということ自体、北村には本当かどうか確認のしようがない。

北朝鮮の内部なんて、拉致被害者の家族という、素人の集合体には、知る由もない。

ほとんど霊界のできごとだろう。オイオイ、霊界とか、不謹慎だから止めろよ。

北朝鮮へのツアーは無いことは無いが、添乗員が付き添い、一挙手一投足を監視される。

北朝鮮を訪問する政治家は、いないことは無い。

目の前の政治家は、本当のことを知っているか、知らない。知っていて嘘を言っているか、知らないで、勝手なことを吹いている。