グローバル・ラノベと政治同人誌だよ。

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拉致被害者を奪還せよ13


「アメリカが北朝鮮への攻撃を止めたと、通達してきました」

稲田は、沢口の服を着て、結果を被害者に伝えに行くハメになった。

彼女は防衛省で忙しい。

多分、殴る蹴るじゃないかと、沢口は告白した。

稲田さんは体丈夫そうだから、適当に防衛して下さい。

「このカルトは御利益がないのかしら。ネオコン・ルートは大事でしょう。トランプは気まぐれなのよ」

ネオコンの末端連中が言う、約束の地、そんなものがあったらいい。だけど日本人がこのカルトに入ってもエルサレムは無い。もし日本が戦乱に巻き込まれたら、

周辺諸国は日本なんかどうでもいい、面倒くさい地域は、まとめて核ミサイルで潰すくらいだろう。

「身内を取り戻す希望を失って、殴る蹴るをしてくるくらいは、人は繊細よ」

「それは甘いですよ。沢口さんだって拉致被害者に群がる有形無形を見たでしょう。政界は妖怪しかいないよ」

そういうお前は何なんだよ、と沢口は思ったが、

政治家はだいたい、身内にツンデレだ。互いに信頼できる人がいないから、身内ひいきがひどくて、汚職をやったりする連中が多い。

「完全な汚物だったら、国会答弁やインタビューでボロがでるから、完全なヨゴレはいないよ」

「だったら、沢口さんは何を支えにしてるの。私のカルトは、沢口さんには何なの」

「政界は上にいけば行くほど、奇妙キテレツな事件が多いからじゃないの」

 

 

徹夜で詰めた仕事が、各方面の気まぐれや諸事情で、無駄になることは多い。

その無駄な右往左往が大方、官僚や政治家の仕事だ。

自衛隊のトップが集まって、北朝鮮方面の成果をまとめた。

「攻撃は中止とかいう情報が流れてきましたけど」

「テレビでは相変わらず、アメリカが北朝鮮を攻撃するとかしないとか騒いでますよ」

「いくらなんでも俺たちは嘘を流されるほど、アメリカの不興は買ってないよ」

「嘘だとしても、これといって困るような作戦でないでしょう。便乗して拉致被害者を奪還するだけです」

「空挺作戦なんて、ブラックホーク・ダウンになったらどうするよ」

「無いよ。彼らは、空からキリストが降ってきたと勘違いするくらい飢えてるし、恐怖政治だよ」

「ならGHQみたいにチョコレート撒いて誤魔化すか」

金正恩日本兵を殺さないと、殺すとか言われたら、向かってくるでしょう」

難しそうな拉致被害者の奪還作戦が内心ホッとしている人は多かった。だが、やってみたら、という人も多かった。

パッと見でその二者を峻別するのは不可能だ。

っていうか、拉致被害者北朝鮮の、どこにいるかさえわからないんだよ、あり得ない作戦だろ。

 

 


稲田は奪還が不可能になった件を、当事者に伝えるにあたって、本当に防弾チョッキを着込んだ。

さすがに撃ってはこないと思うけど、防衛省は便利で良いよ。

朝鮮総連拉致被害者を取り戻す意向は、特に持ってない。

「この人事に大した意味があるとは思えないけど。どうせ2人揃ってクビが飛ぶ運命にあるよ」

「沢口さんは、拉致被害者に信頼されてないんですか。私だって体の良い代打要員だから、別にいいんだけど」

政界の男連中は、だいたい状況がマズくなったらクビを飛ばす為に、女を要職につける。

「いくら利害調整に走り回っても、裏方仕事を全く理解しない人はいるよ。庶民だって忙しいから、いちいち他人の事情を斟酌しない」

沢口は政界の要人を偉いと思ってないし、稲田は末端の利害調整は下らないと思っていた。

 


「稲田さんもこのトトカルチョ引きませんか?」
「沢口です」
「あなた稲田さんじゃないの」
「どっちが来てもおかしくないですけど。ただ、アメリカの北朝鮮への攻撃は中止だそうです」

「で、このトトカルチョなんですよ。拉致被害者は」

1、アメリカが返してくれる
1、中国が返してくれる


本名も分からないような政治活動家に荒られた被害者の会の人々はスレていて、この手のイヤミは普通だったが、沢田は比較的懐かれていた。

「日本が取り戻すっていう項目が抜けてるじゃないですか」

「俺たちはこれまでの体験から、それはないと思ってるんですけど」

「今回の件は、一応自衛隊が取り返すっていう名目だったし、
アメリカ軍に紛れれば可能だと思います。軍事作戦に絶対はないですけどね」

「でもお宅、北朝鮮にコネあるんですか」
「無いのが第一自衛隊だろ」
「あっても無くても同じですよ。頼んで返して貰うのではないし、
あんなヤクザ国家はまた何を仕出かすか分からないから、存続させる必要がありません」
「存続させる必要があるとかないとか言って、結局存続してるじゃないですか」

「そのうち潰れます」

「被害者は、そのうちもう、爺さん、婆さんだし、私たちもそうです。あんな貧しい国で、生きているかどうかも分からない。そんなにプレッシャー掛けてないから、気にしなくていいですよ」

 

 


「北村さん、出稼ぎしたら」

町山は311の後、出稼ぎしたタイプだ。被災地に働ける職場、働きたくなる職場は全く無かった。

企業に311の被害者の就職枠は無いが、採用面接で意外と同情を買った。

「俺は町山さんほど若くないよ。そうやすやすと採用されない」

原発の作業員とか」

北村たちの元には、ある程度の心づけみたいのがあった、拉致問題に噛みたい連中だ。

北村は、そう正直に告白した、俺がいるのはそういう場所なんだと。